最新記事

セキュリティ

米中対立の発火はポーランドから ファーウェイ「スパイ」事件の全貌

2019年7月11日(木)12時32分

王容疑者の運命が最終的にどうなるにせよ、この事件は米国がファーウェイに仕掛けた戦争のただ中に放り込まれた形だ。

2月にポーランドを訪問したペンス米副大統領は、王容疑者とドゥルバイヴォ容疑者の逮捕に言及し、「国家の安全保障を脅かしかねない形で通信領域が侵されるれることを防ごうとする、ポーランドのコミットメントを示したものだ」と称賛した。

中国外務省はロイターの問い合わせに対し、1月に出したコメントを参照するよう回答した。中国外務省報道官は当時、ファーウェイとポーランドの関係先の双方が、この件は「完全に個人の案件だ」とする声明を出したことを「留意した」とした上で、「ファーウェイの安全性は、長年取引先から評価を受けてきた」と述べていた。

ファーウェイによると、同社は900人以上の従業員を抱えるポーランドに13億ドル(約1400億円)以上を投じてきた。同国の通信携帯電話大手プレイ・コミュニケーションズは、基地局の大半でファーウェイ機材を使用している。

1月8日の逮捕から数日後、ファーウェイは王容疑者を解雇した。

しかし同容疑者によると、妻に対してファーウェイの社員が「毎日のように」支援を提供しているほか、会社側も「捜査を助けるため」、職務関連の書類を弁護士に提供した。王容疑者は、弁護士費用も同社に負担してもらいたいとしている。

一方、ドゥルバイヴォ容疑者の弁護士は、記事のためにコメントを求めたロイターに対して回答を拒否した。王容疑者の妻は、インタビューの要請を友人を通じて断った。

ロイターはこの記事を執筆するに当たり、王容疑者やドゥルバイヴォ容疑者の知人、事件に詳しい関係者20人以上に取材した。その中には元同僚や友人、取引先や政府当局者、元情報当局者などが含まれる。

取材を通じて、2人の容疑者がポーランド政府内や通信業界に幅広い人脈を築いていたこと、互いに長年の知り合いで、極めて緊密だったことが判明した。

ポーランドのドゥダ大統領はロイターに対し、容疑は「空虚なもの」ではなく、関連書類が存在すると指摘。スパイ容疑による2人の逮捕は「こうした行為が行われた可能性を示す証拠がある」ことを意味していると述べた。

「私が理解するところでは、ポーランドの治安当局と検察当局の観点から見て、事件は疑いのないものだ」と、ドゥダ大統領は6月に行ったインタビューで説明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中