最新記事

セキュリティ

米中対立の発火はポーランドから ファーウェイ「スパイ」事件の全貌

2019年7月11日(木)12時32分

ロイターは、ポーランドの治安当局がドゥルバイヴォ容疑者の中国訪問に関心を寄せていることをつかんだ。同容疑者はワルシャワの軍事大学で光ファイバー通信ネットワークを経由した侵入監視システムの開発に関わっており、当局がそれについても調査していることがわかった。

ロシアからの圧力に対抗するため米国の安全保障の後ろ盾に依存しているポーランドの政府関係者は、王容疑者の逮捕が、自国の通信網でファーウェイが果たす役割について再考するきっかけになったと話す。ポーランドは、まだファーウェイに規制を設けるかどうか決定していない。

「ファーウェイのような中国企業の製品を使うことの危険性は、ポーランドでの事件が非常にリアルに証明している」──駐ポーランド米大使のジョージェット・モスバッカー氏はロイターの取材にこう述べ、通信網の整備にあたり、「欧州のすべての同盟国が、この脅威を真剣に受け止める必要がある」と指摘した。

ファーウェイの広報担当者は、「ポーランドでの事案は司法案件であり、現段階では何もコメントできない」としている。

政府内に築いた人脈

王容疑者は、自身の経歴を考えれば、ポーランド当局がなぜ自分を中国のスパイとみているのかは理解できるとしている。

ポーランド語を操り、ファーウェイで勤務していた事実のほかに、王容疑者は港湾都市グダニスの中国総領事館に4年半勤務し、ポーランド当局内に人脈を広げていた。

「私は良きスパイ候補と見られ得るのだろう」と、収監中の王容疑者はロイターに回答を寄せた。

だが王容疑者は、中国政府のためスパイ行為を働いたことを全面的に否定する。

「一度もそのような誘いを受けたことはない。中国政府のためにスパイをしたことなどない。ポーランドに損害を与えるようなことは一切やっていない。ポーランドは私の第2の故郷であり、そんなことは荒唐無稽だ」と、王容疑者は反論した。

王容疑者を担当するヤンコフスキー弁護士は、事件の証拠については議論しないとしつつも、王容疑者は、米国がファーウェイに仕掛けた戦争に巻き込まれたと考えているとした。また、保釈または起訴されるまでに2年以上収監される可能性があることに懸念を示した。ポーランドの法律では、当局の捜査が行われる間、容疑者は何年も拘束されることがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中