最新記事

中東

トランプの新たな対イラン防衛戦略、欧州、湾岸諸国とも相手にせず?

2019年7月1日(月)16時00分
ララ・セリグマン

アラブ首長国連邦を訪問して協力を求めたポンペオ米国務長官(6月24日) JACQUELYN MARTINーPOOLーREUTERS

<イラン近海を航行する船舶の護衛に欧州やアジア、湾岸諸国を巻き込みたいが>

イラン情勢をめぐり緊張が高まるなか、ポンペオ米国務長官は6月下旬、湾岸諸国を訪問して新たな防衛計画「センチネル」への協力を要請した。中東や欧州、アジアの同盟国と連携し、ホルムズ海峡を含む湾岸地域の海運の要所を航行する船舶の安全性を高めるための戦略だ。

しかし専門家の間では、同盟国から十分な協力を得られるのか懐疑的な声が広がっている。「欧州諸国が一部の負担を担うだろうが、主にアメリカ中心の取り組みに終わるだろう」と、米ランド研究所のアナリスト、ベッカ・ワッサーは言う。計画が実施されれば、湾岸諸国とイランの間に衝突が起きた場合に米軍が戦闘に引きずり込まれるリスクが高まるとの指摘もある。

詳細は不明だが、この計画ではイランの脅威に備え、ホルムズ海峡を航行する船舶に監視カメラなどの機材が提供される見込みだ。また艦艇による護衛が付くケースもあるとみられる。

ただし、カメラの提供や船舶の護衛をどの国が担うかは明らかでない。センチネル計画はイランの攻撃的な姿勢に対抗する「象徴的」な対応の意味合いが強いと、米ブルッキングス研究所のスーザン・マロニーは言う。イランのタンカー攻撃などを「抑止して状況を一変させる」ほどの力はないが、米軍の軍事攻撃よりは「ずっとましだ」。

もっとも、テロの脅威から商業船舶を守る国際的な枠組みは既に存在する。米、豪、カナダ、韓国、欧州諸国などからなる多国籍海上部隊CTF150は、ホルムズ海峡、バベルマンデブ海峡、スエズ運河などの海域を通過する計2700万バレル相当の石油タンカーを監視している。

さらに、アメリカや湾岸諸国が中心となる多国籍海上部隊CTF152もペルシャ湾の監視を担っている。

イラク戦争の再現を期待

湾岸諸国の護衛能力についても疑問がある。アラブ首長国連邦やサウジアラビアをはじめとする湾岸諸国の多くでは海軍の能力が「非常に低い」と、ワッサーは言う。「センチネル計画において大きな役割を果たすことは期待できない」

そうなると、アメリカはCTF150に参加している欧州諸国に協力を求めるだろう。しかし、イランとの核合意を破棄したトランプ政権の対イラン政策に欧州諸国が積極的に協力する可能性は低い。

アメリカとイランの対立激化を受けて、イランと貿易関係を持つ欧州やアジアの大半の国々は既に微妙な舵取りを迫られている。そうした国がセンチネル計画の護衛活動に加われば、イランから「潜在的な敵国」と見なされかねない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏娘が宮殿初訪問、両親の間に立つ写真 後継ア

ワールド

韓国大統領が4日訪中、両国関係の「新たな章」期待 

ワールド

インド製造業PMI、12月2年ぶり低水準 需要減退

ワールド

シンガポール、25年4.8%成長 AI特需で21年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 8
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 9
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中