最新記事

フィリピン

中東追われたIS、アジアで復活を準備 フィリピン・テロ組織、エジプト人など外国メンバー参加

2019年7月30日(火)20時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

パキスタン人容疑者の逮捕がきっかけ

地元紙などの報道を総合すると、今回の外国人メンバーのフィリピンでの活動は、過去2カ月間に相次いで摘発したパキスタン人テロ容疑者の捜査から浮かび上がったという。

6月にスールー諸島インダナンにある軍の施設で発生した自爆テロ事件の捜査過程で爆弾製造に関与した疑いからミンダナオ島サンボアガで逮捕したパキスタン国籍のワカール・アハマッド容疑者(36)ら3人は、スールー諸島経由でフィリピンに不法入国して活動していたことが明らかになっている。

さらに2019年1月28日にスールー州ホロのキリスト教会で自爆テロを実行して死亡したインドネシア人夫妻も船でインドネシア領から南部ホロ島に不法入国して犯行に及んだ疑いがある。

こうしたことからインドネシアやマレーシア経由でフィリピン南部に不法入国するテロ組織のルートがあるとフィリピン治安当局は見ており、関係国との間でさらなる取り締まり強化でテロリストの流入阻止に全力を挙げている。

この2人のインドネシア人夫妻からなるテロ実行容疑者もフィリピンに不法入国後にサワジャーン指導者と面会してテロ実行を打ち合わせしたとされている。

フィリピン南部はイスラム教武装組織が以前から活発な活動をしている地域で、ISとの関係も密接とされる。もともとイスラム教徒の住民が多く住んでいたことからテロ組織メンバーが潜伏するには環境が整っている。

加えて海路でフィリピンに不法入国するルートも多く、マラウィ市の武装占拠事件以降、フィリピン、マレーシア、インドネシアが海軍、空軍も動員して不法入国に対する警戒監視態勢をとっているとはいえ、広大な海域をカバーするには不十分で、テロリストなどの不法入国が続いているのが現状だ。

一方、インドネシア当局は国内でのテロ組織壊滅を目指した国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」や国家情報庁(BIN)、さらに国軍部隊を動員したテロ組織の掃討作戦を継続している。こうしたインドネシアの取り締まり強化も、南部を中心にまだIS関連組織の活動が容易とされるフィリピンへのインドネシア人や外国人のテロ組織メンバーの渡航が続く背景とみられている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など



20190806issue_cover200.jpg
※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ領空にイラン弾道ミサイル、NATO迎撃 エル

ワールド

EXCLUSIVE-トランプ氏、原油高抑制策を検討

ワールド

トランプ氏、米地上部隊のイラン派遣巡る決定には「程

ワールド

情報BOX:G7、緊急石油備蓄の放出を検討 各国の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 8
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 9
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 10
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中