最新記事

フィリピン

中東追われたIS、アジアで復活を準備 フィリピン・テロ組織、エジプト人など外国メンバー参加

2019年7月30日(火)20時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2017年、ISに忠誠を誓う組織とフィリピン軍の戦いで荒れたマラウィ市 Romeo Ranoco-REUTERS

<イラクやシリアなどで支配地域を失い、このまま消滅も時間の問題と思われたIS。だが、彼らはイスラム教徒の多い東南アジアで新たな拠点を作ろうとしている>

フィリピン国軍は同国内で活動する複数のイスラム教テロ組織に外国人メンバーが含まれていることを確認したと発表した。7月24日の地元紙「フィリピン・スター」などによると、南部ホロ島やバシラン島周辺を活動地域とするテロ組織「アブ・サヤフ」とミンダナオ島を拠点とする「バンサロモ・イスラム自由戦士(BIFF)」に少なくとも7人の外国人メンバーが参加しているとの見方を明らかにした。こうした事態からフィリピン当局は現在も中東のテロ組織「イスラム国(IS)」に関係する組織、メンバーがフィリピンを拠点に新たな態勢作りを画策しているとの見方を強めている。

同地域を管轄する国軍西ミンダナオ管区のチリリト・ソベジャナ司令官が明らかにしたところによると、7人は複数の組織に分散して南部のバシラン島、スールー島、マギンダナオ地方でテロ組織に参加、自爆テロの訓練などを受けているという。

同司令官は7人の国籍などについて「現段階では明らかにできない」としているが、マニラで会見したデルフィン・ロレンザーナ国防相は「入手している情報では7人はエジプト人、マレーシア人、インドネシア人、シンガポール人であると思う」と明らかにしている。

ロレンザーナ国防相はさらに「7人のうち何人かは氏名も判明しているが、全員の身元がわかるまで公表はしない」としたうえで7人の外国人がイスラム系武装組織のハティブ・ハジャン・サワジャーン指導者の指揮下で複数の組織に分散して訓練を受けているとの見方を示した。

新指導者の下で既存組織メンバーを糾合

サワジャーンは、ミンダナオ島マラウィ市を占拠した武装勢力メンバーとして殺害されたIS系指導者イスニロン・ハピロン容疑者の後継者のひとりとされ、ISの影響下で「アブ・サヤフ」や「BIFF」といった既存の組織の残党らを糾合する形で新たなテログループを再構築しようとしているとも見られている。

中東のシリアやイラクでISが壊滅状態に追い込まれたのを受けて、ISの残党メンバーや中東に渡航することができなかった東南アジア各地の同調者などが新たな拠点作りに乗り出していると見られており、フィリピンは彼らにとって東南アジアの拠点と目されている。

ロレンザーナ国防相は7人の外国人メンバーのほかにも「少なくとも100人の外国人テロメンバーがすでにフィリピンに潜入し、南部を中心に活動しているとの情報がある」ことも明らかにした。

ただ「この100人に関しては現在鋭意調査中でまだテロ組織のメンバーと確定した訳ではない」としながらも追跡調査中であるとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ECB、量的緩和再開は「まだ遠い」=シュナーベル専

ビジネス

スズキ、4ー9月期純利益11%減 半導体問題で通期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中