最新記事

事件

フィリピンで人権活動家が狙われる連続殺害事件 「超法規的殺人」への国連調査と関連?

2019年6月19日(水)17時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

「超法規的殺人」の犠牲者を悼み、ドゥテルテへの抗議デモをする人権活動家たち Erik De Castro - REUTERS

<ドゥテルテ大統領による麻薬取締り対策で黙認されているという「超法規的殺人」。こうした人権侵害を調査するNGOなどの関係者が次つぎと殺害される事件が起きた──>

フィリピンで人権活動家や農民運動指導者など4人が相次いで殺害される事件が起きている。4人はいずれも正体不明の男からの銃撃を受けて死亡。これはドゥテルテ政権の麻薬犯罪対策で横行しているという「超法規的殺人」の実態について、国連が独立して調査すると呼びかけた約1週間後の、6月15〜17日の3日間に連続して発生した。

国連の調査方針表明と連続殺人事件の関係性は不明だが、フィリピン国家警察では「人権活動家を殺害することメリットがどこにあるのか依然として不明だが、犠牲者についてはその関連性を調査している」と本格的な調査に乗り出す構えを一応みせている。

フィリピン地元紙「インクワイアラー」やネット報道機関「ラップラー」「ブナール・ニュース」などが6月17日にフィリピン警察の発表として伝えたところによると、6月15日にフィリピンの代表的な人権NGO組織「カラパタン」のソルソゴン事務所所属のフィリピン人スタッフであるライアン・フビラ氏(22)とネリー・バガサラ氏(69)がルソン島南部ビコル地方ソルソゴン州でバイクに乗った正体不明の男たちから至近距離から銃弾を浴びて死亡した。

カラパタンによるとフビラ氏やバガサラ氏は以前から軍兵士や警察官による監視を受けており、殺害前にも正体不明の人物から尾行を受けていたという。特にフビラ氏は4月にもナンバープレートが外された黒いバイクとピックアップトラックによる執拗な尾行を受けていたとされ、計画的な殺人との見方が強まっている。

カラパタンの2人が殺害された翌16日には南部ミンダナオ島中央部にあるブキドノン州で左翼系組織「フィリピン農民運動」の指導者だったノノイ・パルマ氏が自宅近くで銃撃されて死亡した。

目撃者によるとが1台のバイクに乗った3人の男たちから銃撃を受けて死亡したという。3人のうち1人は地元の民兵だったという証言もある。「フィリピン農民運動」関係者によると、農民の権利擁護を訴えていたパルマ氏には地元当局などから強い反発を受けていたという。

さらに17日午前7時半ごろには「新国家運動」という団体の活動家ネプタリ・モラダ氏(45)がルソン島南部ナガシ市の自宅からピリ市の事務所に向かってバイクで走行中、白い車両が接近してきて銃撃を受けて死亡した、と地元警察が発表。モラダ氏は政党「バヤン・ムナ」の地方幹部を務めたこともあったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中