最新記事

香港

「逃亡犯条例」改正案で香港民主派のデモ、警官隊と衝突 政治危機の様相強まる

2019年6月10日(月)14時00分

香港で、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対するために民主派が行った大規模デモは、立法会(議会)の周辺に配置された数百人の警官隊と、警官隊が築いた阻止線突破を試みたデモ参加者が衝突する騒然とした事態になり、政治危機の様相が強まっている。写真は9日のデモの様子(2019年 ロイター/Thomas Peter)

香港で9日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対するために民主派が行った大規模デモは、立法会(議会)の周辺に配置された数百人の警官隊と、警官隊が築いた阻止線突破を試みたデモ参加者が衝突する騒然とした事態になり、政治危機の様相が強まっている。警官隊は10日朝も立法会包囲を続けた。

警官隊はデモ参加者を警棒でたたいたり、胡椒スプレーを使って鎮圧に動き、双方に負傷者が出たもようで、救急車も出動した。こうした衝突の影響で、金属製の障壁が折れ曲がる様子も見られた。

逃亡犯条例改正案は、12日から立法会で審議が始まる予定。ただ、民主派は、逃亡犯条例改正によって「1国2制度」の下で香港に認められてきた法的な独立性が損なわれるリスクを懸念。このため逃亡犯条例改正の中止と、中国政府の支持を受けている林鄭月娥行政長官の辞任を要求するデモが実施された。

抗議デモの参加者は主催者側の発表で103万人とされ、2003年の「国家安全条例」案に反対した50万人規模のデモを大きく上回った。警察側は、デモ参加者はピーク時で24万人と見積もっている。

香港紙、明報は論説で、政府は抗議活動を真剣に受け止めるべきだと指摘。条例改正を無理やり推し進めれば緊張が一段と高まるとの懸念を示した。

一方、中国の国営英字紙チャイナ・デーリーは10日の論説で、「外国勢力」が混乱を画策しているとの見方を示した。チャイナ・デーリーは「公正な人であれば、条例改正案は香港の法治と正義のための合法的で賢明で妥当な法案だと考えるだろう」と指摘。「残念ながら香港の一部の住民は、野党勢力やその仲間の外国勢にだまされて改正反対運動を支持している」とした。

アムネスティ・インターナショナルは、条例改正は人権に対する脅威だとし「仮に施行されれば、中国当局は、香港の評論家や人権活動家、ジャーナリスト、NGO職員などを、中国本土と同じようにターゲットにすることが可能になる」と指摘した。

*内容を追加します。

[香港 10日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


「逃亡犯条例」改正案に反対するための香港のデモ Al Jazeera English / YouTube

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとベラルーシ、戦術核の発射予行演習=ルカシェ

ビジネス

株式6・債券2・金2が最適資産運用戦略=モルガンS

ワールド

米FOMC開始、ミラン・クック両理事も出席

ビジネス

米ホリデー商戦、オンライン売上高2.1%増に減速へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが.…
  • 8
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 9
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中