最新記事

米核意識

米国民の3人に1人が「北朝鮮に対する先制核攻撃を支持」の衝撃

One-Third of U.S. Backs Nuclear War on North Korea, Killing One Million

2019年6月27日(木)18時00分
トム・オコナー

敵国の民間人は犠牲にしても構わない(写真は、「地球」を囲んでマスゲームを演じる北朝鮮国民、2018年9月6日) Danish Siddiqui-REUTERS

<米国民の中に、核兵器使用に抵抗がなく、敵なら一般市民の多大な犠牲もいとわない強硬な主戦論者が潜んでいることが明らかになった>

最近実施された世論調査で、米国人の3分の1は、たとえそれが民間人100万人が死亡する核攻撃のケースであっても、北朝鮮に対する先制攻撃を支持するという結果が出た。

米学術誌「原子力科学者会報」は6月24日、英調査会社ユーガブと共同で実施した米世論についての調査の詳細を発表した。米朝間の歴史的な和平プロセスが行き詰って見えるなかで、北朝鮮との軍事衝突について米国民の意見を調査したもの。それによって明らかになった最も「懸念すべき」結果のひとつが、「米世論の中に、少数派とはいえ大勢の主戦派が潜んでいる」ことだった。「回答者の3分の1以上が、通常兵器であると核兵器であるとを問わずあらゆるケースの先制攻撃を支持しており、大規模な軍事衝突は回避すべきだと考える安全保障の専門家の慎重論など、まったく意に介していないことがわかった」という。

米国による先制攻撃を、通常兵器から核兵器による攻撃へ引き上げても、「33%が支持か、やや支持」という数字にほとんど変化はない。「核攻撃にすると、北朝鮮の民間人の犠牲者は、1万5000人から110万人にハネ上がるが、それを知った後でも核攻撃を支持する人の割合に大きな変化はなかった」

米軍の能力を過大評価

報告書は、これらの結果は米国民の「核兵器使用に無神経で、敵国が相手なら無実の一般市民を殺すことも厭わない衝撃的な傾向」を表している、と指摘した。

回答には政治的信条も影響を及ぼした。回答者の大半は北朝鮮に対する軍事行動に反対を表明したものの、「トランプ支持者の過半数は米国による攻撃を『やや支持』と回答した。トランプ支持者以外では、攻撃を支持したのは8%だけだった。

また、死刑を支持すると回答した人の方が、北朝鮮の一般市民に多くの犠牲者を出してもかまわないとする傾向があった。

調査は、「米軍の攻撃力と防御力について、米国民の認識がいかに誤っているか」も露呈している。報告書は、トランプの極端な主張がそうした誤解の一因だと指摘する。回答者の3分の1以上が、米国による攻撃の「第一弾」で北朝鮮の核兵器を排除できると考えていた。また回答者の47%は、北朝鮮から複数の核ミサイルが向かってきても、一度に3つは迎撃できると考えていた。

最後に報告書は、核戦争について「一般市民に改めて教員を行う必要がある」と締めくくった。

(翻訳:森美歩)

20190702issue_cover200.jpg
※7月2日号(6月25日発売)は「残念なリベラルの処方箋」特集。日本でもアメリカでも「リベラル」はなぜ存在感を失うのか? 政権担当能力を示しきれない野党が復活する方法は? リベラル衰退の元凶に迫る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中