最新記事

中東

イラン「あと10日でウラン貯蔵量が核合意制限を超える」と宣言 米「核の脅迫」と非難、 EUは静観

2019年6月18日(火)13時30分

6月17日、シャナハン米国防長官代行は17日、中東に約1000人の米兵を追加派遣すると発表した。テヘランで2012年2月撮影(2019年 ロイター/Morteza Nikoubazl)

シャナハン米国防長官代行は17日、中東に約1000人の米兵を追加派遣すると発表した。イランの脅威を巡る懸念を理由とし、増派は「防衛目的」だと説明した。

イランと米国を巡っては、ホルムズ海峡付近で前週起きたタンカー攻撃に関与したとして米国がイランを非難したことを受け、対立激化が懸念されていた。

シャナハン氏は声明で「イランによる最近の攻撃は、中東地域で米国人や米国の国益を脅かすイラン軍やイラン系勢力による敵対的な行動についてわれわれが入手した信頼の置ける情報を裏付けるものだ」と表明した。

今回の追加派兵は、5月のタンカー攻撃を受けて先月発表された1500人の増派に加えて行われる。

これに先立ちイランは17日、2015年の核合意で定められた低濃縮ウランの国内貯蔵があと10日で制限量を超過する見通しだと明らかにした。実際に制限量を上回れば核合意違反と見なされ、米国などはイランが「核を使って脅迫している」として反発した。

2015年核合意ではイランの低濃縮ウラン貯蔵の上限を300キロ、濃縮度は3.67%までとしている。

イラン原子力庁のベヘルーズ・カマルバンディ報道官は国営テレビで「われわれは濃縮率を4倍にし、このところそれをさらに引き上げており、10日後には300キロの上限を超過するだろう」と表明。同時に「欧州各国が行動すれば、まだ時間はある」として欧州各国に行動を促した。

イランの動きは核合意維持に一段の痛手となるが、ロウハニ大統領は、核合意の崩壊は中東地域や世界の利益にならないとの見方を示した。欧州諸国は核合意維持に残された時間がまだあるとし、「非常に重要な局面にある」と強調した。

また、イランの有力国会議員はファルス通信に対し、欧州諸国が核合意を維持できなければ、イランは核拡散防止条約(NPT)から脱退すると述べ、「核合意維持に向けてイランが欧州側に与えた60日の期限まで残された時間は限られている」と警告した。

米国家安全保障会議(NSC)のガレット・マーキス報道官は、イラン側の姿勢は「核を使った脅し」だと非難。「イラン核合意で(ウラン濃縮)能力が温存されたため、濃縮が可能になっている」とした上で、「トランプ大統領はイランによる核兵器開発は容認しないとこれまでも明確に示している。イランのこうした脅しに対し、国際社会は圧力を強める必要がある」と訴えた。

イスラエルのネタニヤフ首相も米国の声に同調。イランが核合意に違反するなら、国際社会は対イラン制裁の「スナップバック(復活)」を直ちに実行する必要があると表明した。さらに「イランが核兵器を手に入れることをイスラエルは認めない」とし、先制的な軍事行動に出る可能性も示唆した。

英国はイランが核合意で定める上限を超えた場合、「すべての選択肢」を検討すると表明した。

一方、モゲリーニ欧州連合(EU)外交安全保障上級代表は「われわれは種々の声明ではなく国際原子力機関(IAEA)の報告に基づき対応する。これまでイランは核合意を順守しており、今後もそうあるよう願っている」と述べ、IAEAの判断を見極める考えを強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中