最新記事

米中貿易戦争

トランプ政権幹部、対中追加関税は「米消費者にも負担」と認める

Trump Economic Official Admits Americans 'Will Suffer' From China Tariffs

2019年5月13日(月)17時15分
ジェイソン・レモン

強硬に攻めるトランプだが、その経済的根拠はひどく怪しい(5月9日、ホワイトハウスで)Jonathan Ernst-REUTERS

<トランプの突然の対中関税引き上げで中国だけでなくアメリカ国内の非難も高まっている。最大の問題の一つは、トランプが「関税は中国が負担する」と言い張っていることだ>

トランプ政権で国家経済会議(NEC)委員長を務めるローレンス・クドローは5月12日、中国製品に対する追加関税の発動によりアメリカの消費者も「痛みをかぶる」ことを認めた。

FOXニュースの番組で中国との通商交渉についての質問に答えたもの。トランプ大統領が中国からの一部輸入品への追加関税を発動した昨年夏以降、アメリカと中国の緊張は高まる一方。5月10日には、トランプは突如、さらに2000億ドル分の中国からの輸入品について、関税を10%から25%に引き上げた。

主要なエコノミストや専門家は以前から、トランプの通商政策を批判してきた。追加関税はアメリカの企業や消費者に対する増税に等しいからだ。しかしトランプはそうした見方には耳を貸さず、輸入関税を払うのは中国側だから企業や消費者には影響はないと言い張っている。クドローは番組で、その言い方は誤りだと認めた。

司会者はまず、大統領の主張に反して輸入品への関税を負担するのはアメリカの企業だと指摘。企業は関税分を価格に転嫁するから、結局はアメリカの消費者の負担が増えると述べた。

「アメリカの国庫が潤う」とも

これに対しクドローは「それは確かにそうだ。実際のところは(米中)双方が負担することになるだろう」と述べた。

司会者が、関税は「アメリカに入ってくる物品に」かかるものであり、「中国側が支払うわけではない」とたたみかけると、クドローは「それはそうだが、中国側もGDPの減少などの痛みをこうむる」と反論。関税を払うのは中国だとトランプ自身が述べていたことを司会者が指摘すると、クドローは「米中両方が痛みをこうむることになる」と答えた。

トランプはこれまで、多額の関税は中国が米財務省に支払うのものだから、アメリカの国庫も潤うと繰り返し主張してきた。専門家らが言うようにこれは間違っている。追加関税のせいで高い買い物をさせられるのは中国ではなくアメリカの企業であり消費者だ。米市場において中国製品の価格が高騰し競争力を失い、中国の景気が減速することになったとしても、それは二次的な効果に過ぎない。

ゴールドマン・サックスの元重役で、トランプ政権で初代のNEC委員長を務めたゲーリー・コーンは3月、追加関税を厳しく批判した。

「関税は何の効果ももたらさない。あるとすれば、経済の足を引っ張るくらいのものだ。典型的なアメリカの労働者にとって、使える収入には限りがあるからだ」とコーンはラジオ番組のインタビューで述べた。「生活必需品にこれまでよりもっと金がかかるようになれば、欲しいサービスに回す金は減る」

(翻訳:村井裕美)

20190514cover-200.jpg
※5月14日号(5月8日発売)は「日本の皇室 世界の王室」特集。民主主義国の君主として伝統を守りつつ、時代の変化にも柔軟に対応する皇室と王室の新たな役割とは何か――。世界各国の王室を図解で解説し、カネ事情や在位期間のランキングも掲載。日本の皇室からイギリス、ブータン、オランダ、デンマーク王室の最新事情まで、21世紀の君主論を特集しました。


ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中