最新記事

米司法

トランプ「護衛官」、バー司法長官のロシア疑惑

So Many Conflicts, So Little Time

2019年4月26日(金)13時05分
クリスティナ・マザ

次はモスクワのアルファ銀行との関係だ。17年3月から司法長官に就任するまでの間、バーが弁護士として所属していた法律事務所カークランド&エリスはアルファ銀行の代理人だった。また同事務所の共同経営者で、やはりアルファ銀行とつながっているブライアン・ベンチョースキーは17年6月、トランプから司法省犯罪対策部門のトップに指名されている(昨年7月にようやく承認された)。

ベンチョースキーは同法律事務所でアルファ銀行の代理人を務め、同銀行とトランプのファミリー企業トランプ・オーガニゼーションがオンライン上で怪しげなやりとりをしていたとの疑惑にも対応していた。

また同銀行の株主にはロシアの富豪ゲルマン・ハンがいる。そしてこの男の娘婿で弁護士のアレックス・バンデルズワンは、ロシア疑惑の捜査で虚偽の供述をしたとして訴追されている。

「弁護士の職業規範に照らすと、バーが同銀行の法律顧問だったかどうかはとても重要だ」と前出のフリシュは言う。「もしも法律顧問の立場であれば、直接的な関わりはないとしても、利益相反の疑いが生じ得る」

次は米オクジフ・キャピタル・マネジメントという名のヘッジファンド。バーは16年から18年まで役員会に名を連ねていた。そしてこの会社も怪しい。

共謀疑惑の発生地点

このファンドは米大富豪ジフ兄弟の出資金を元手に、資金運用のプロであるアメリカ人のダン・オクが立ち上げたもの。07年の上場後もジフ兄弟は同社の株式を保有しているが、彼らはロシア政府から目を付けられてもいる。ロシア政府と対立する米資産家ビル・ブラウダーと仕事上のつながりがあるからだ。

16年6月のトランプ陣営幹部とロシア人弁護士の秘密会談で、ジフ兄弟の名前が出たことも分かっている。問題の弁護士ナタリア・ベセルニツカヤが、ヒラリー・クリントンによる「違法行為」の証拠をちらつかせたときのことだという。

バーがオクジフに在籍していいた事実だけで、利益相反の可能性があると考える専門家もいる。ロシア政府がジフ兄弟に関心を抱いていた事実も、今回の捜査の対象だったからだ。

「あの秘密会議にベセルニツカヤが出席していて、ブラウダーとその交友関係について話したという事実。それを踏まえると、あの会合の目的は何で、ブラウダーやジフ兄弟の役割は何かという疑問が生じる。そこで何らかの共謀があったのだろうか」とシュガーマンは問う。

そして最後に、ドイツ銀行の問題がある。ドイツ銀行は大統領の座を目指すトランプに融資を提供していた唯一の銀行として知られるが、バーはここに相当な資産を預けていた。この銀行はロシアの資金洗浄疑惑でも名前が挙がっており、議会が今もトランプと同銀行のつながりを調べている。

いかがだろう。これだけの事実がそろえば、バーはロシア疑惑の捜査の監督から身を引くべきではないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中