最新記事

ブレグジット

残留へと傾き始めたイギリスの変心にEUは期待する

Delay May Mean No Brexit, Hopes EU

2019年4月19日(金)13時30分
オーエン・マシューズ

だが、加盟国の我慢もそろそろ限界のようだ。オックスフォード大学の著名な歴史学者ティモシー・ガートン・アッシュは先週、「長年の友人たちや親イギリス派も含め、大陸ヨーロッパの人々の大多数に見限られたことに、私はショックを受け、悲しんでいる」と、英ガーディアン紙に寄稿した。「イギリスは今や除外すべき毒であり、壊疽(えそ)にかかった手足だ。ヨーロッパはイギリスを切り離したほうが健康になると見られている」

EUのドナルド・トゥスク大統領は、イギリスは決断を永遠に先延ばしにすることはできないという明確なメッセージを送った。「今度は時間を無駄にしないでほしい」と、トゥスクは記者団に語った。

しかしブレグジットの遅れについて審議を行った英議会では、緊急性が感じられなかった。「圧力弁が解除されたような感じだ。議員はメイを追い落とせず、閣僚の間には諦めが漂っている。誰もが休憩を欲しがっている」と、 ガーディアン紙の政治記者ジェシカ・エルゴットは下院議場からツイートした。

疲れ果てたイギリス政界を、間もなく2つの選挙が揺さぶるかもしれない。1つは5月2日に予定される統一地方選。もう1つは5月23日の欧州議会選で、ブレグジットの遅れによりイギリスは今回も参加する。

今まではどちらの選挙に対しても、イギリス人の関心は薄かった。投票率が低いために、支持率から予想された数をはるかに超える議席を野党が獲得したケースも多かった。

前回14年の欧州議会選では、強硬な反EU派のイギリス独立党(UKIP)が24議席、労働党が20議席を勝ち取り、保守党は19議席だった。統一地方選と欧州議会選では、失望したブレグジット支持派と不満を抱く残留派の両方が既存の政党に不満を伝えようと、大規模な抗議投票を行うことになりそうだ。

時間は常に残留派の味方だ。ブレグジット支持が僅差で多数を占めた16年の国民投票の民主的な正統性は、刻々と失われていく。離脱派に多い高齢の有権者は少なくなっていき、EU残留を強く支持する若い有権者の割合が増えるためだ。そしてEUは渋々ながら、イギリスに時間を与えることに同意した。

イギリスと大陸ヨーロッパ両方のブレグジット反対派が望むのは、今年のハロウィーンがただのお祭りではなく、イギリスがブレグジットの悪夢から目覚める瞬間になることだ。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2019年04月23日号掲載>

20190423cover-200.jpg

※4月23日号(4月16日発売)は「世界を変えるブロックチェーン起業」特集。難民用デジタルID、分散型送電網、物流管理、医療情報シェア......「分散型台帳」というテクノロジーを使い、世界を救おうとする各国の社会起業家たち。本誌が世界の専門家と選んだ「ブロックチェーン大賞」(Blockchain Impact Awards 2019)受賞の新興企業7社も誌面で紹介する。

ニューズウィーク日本版 AI兵士の新しい戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月13号(1月6日発売)は「AI兵士の新しい戦争」特集。ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

JPモルガン資産運用部門が議決権行使助言会社利用打

ワールド

ベネズエラ、原油売却益で米国製品購入へ=トランプ氏

ワールド

米、ベネズエラ原油取引・収入の管理必要 影響力確保

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米労働関連指標を見極め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 5
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 8
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中