最新記事

緑地

中国とインドが地球の緑地増加に寄与していた

2019年3月7日(木)19時02分
松岡由希子

地球の緑地が過去20年間で増えていることが明らかとなった。その増加に寄与しているのは、世界最大の人口を擁し、経済成長が著しい中国とインドである。

アメリカ航空宇宙局(NASA)では、2000年から2017年まで、地球観測衛星2基に搭載した中分解能分光放射計(MODIS)で地上500メートルから地球の植生の変化を測定し、高解像度データを収集してきた。

中国の植樹プログラム「緑の万里の長城」

米ボストン大学のランガ・ミネニ教授らの研究チームがこれらの衛星データを分析したところ、2000年以降のおよそ20年間で地球の葉面積は5%増加し、その規模はアマゾン熱帯雨林の大きさに相当する550万平方キロメートルにのぼることがわかった。衛星データの分析結果をまとめた研究論文は、2019年2月11日、学術雑誌「ネイチャー・サステナビリティ」で公開されている。

とりわけ中国とインドで緑地が増えていることは、研究チームを驚かせた。研究論文の筆頭著者であるボストン大学のチー・チェン氏は「『人口の多い国々による乱開発が土壌の劣化を招いている』という一般的な見方を鑑みると、中国とインドが地球全体の緑地の増加の3分の1を占めていることは驚きだ」とコメントしている。

global_tamo_2017_full.pngNASA

緑地の内訳には両国で違いがあり、インドでは、緑地の82%が耕地で、森林はわずか4.4%である一方、中国では、植樹プログラム「緑の万里の長城」などの植樹活動や森林保護によって緑地の42%を森林が占め、耕地は32%となっている。また、中国、インドともに耕地面積は2000年以降それほど変化していないものの、集約農業によって、年間の食料生産量は35%以上増加している。

countrieschart_tamo_2017.pngNASA

熱帯地域における自然植生の減少を相殺するものではない

地球で緑地が増加しているという現象は、すでに1990年代半ば、ミネニ教授らによって確認されていたが、植林や農業といった人間活動が主たる要因であるかどうかは解明できていなかった。

研究チームの一員でNASAエイムズ研究センターに所属するラマクリシュナ・ネマニ氏は、今回の研究成果をふまえ「人間活動が地球の緑化における主要な要素のひとつであることがわかった。気候モデルにおいても、この要素を考慮する必要があるだろう」と述べ、輪作や灌漑、肥料の使用、森林伐採、植林など、大気中の炭素に影響を与える人間の土地利用を「地球システムモデル」に組み込むよう提唱している。

中国やインドを中心とする緑地の増加は、熱帯地域における自然植生の減少の損失を相殺するものではないものの、ネマニ氏は「1970年代から1980年代にかけて中国やインドの植生状況はよくなかったが、90年代にこの課題が認識され、今日では状況が改善している。人類には立ち直る力があることを示すものだ」と前向きな見解を述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

物価予想、5年後「上がる」は83% 高水準続く=1

ワールド

韓国・イタリア首脳が会談、AI・半導体など協力強化

ワールド

訂正-コロンビアで左翼ゲリラ同士が衝突、27人死亡

ワールド

グアテマラ刑務所で暴動、刑務官ら一時人質 治安非常
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中