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グーグルよ、「邪悪」になれるのか?――米中AI武器利用の狭間で

不透明感を増すグーグル(写真は米カリフォルニア州マウンテンビューの本社) Stephen Lam- REUTERS

「邪悪になるな」という理念を守るために中国を撤退したグーグルが、再び中国市場に参入しようとしているとして、米軍トップが「中国軍に恩恵を与える」とグーグルに警告。背景には米中のAI武器利用競争がある。

米軍制服組トップがグーグルに警告

米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が、米上院の軍事委員会公聴会でグーグルの中国における事業活動に触れ、「間接的に中国人民解放軍に恩恵を与えている」と批判した。3月17日のCNNやロイターあるいは中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」などが、一斉に報じた。

それらによれば、米軍当局は「グーグルが米・国防総省の事業から撤退しておきながら、中国市場に再参入しようとするのは適切でない」とみなしており、結果的に「中国による民間技術の軍事面への転用を容易にする役割をグーグルが果たしている」と批判しているとのこと。

それに対してグーグルの広報担当者は「米・国防総省のいくつかの事業から撤退したものの、完全撤退ではなく、一部での関与は続けている」と述べ、撤退した理由に関しては「社内の反対意見を受けたため」とCNNの取材に回答している。

中国のメディアはさらに、グーグルが米・国防総省から撤退した事業の中には、小型無人飛行機(ドローン)の軍事作戦能力向上などに向けた人工知能(AI)活用の事業があることに焦点を当てている。

中国「次世代AI発展計画」発布の年に北京に「グーグルAI中国センター」

というのも、グーグルの中国市場再参入のコアになっているのはAIだからだ。

2017年12月13日、グーグルは北京に「グーグルAI中国センター(Google AI China Center)」を設置している。

この年はまさに習近平政権が「次世代AI発展計画」を発布した年だった。

今年2月12日付のコラム「中国のAI巨大戦略と米中対立――中国政府指名5大企業の怪」で述べたように、国務院(中国人民政府)は2017年7月8日、国発〔2017〕35号として「次世代AI発展計画(中国語では新一代人工智能発展規画)」を発布している。これは2015年5月19日に国発〔2015〕28号として発布された「中国製造2025」を補強する計画だ。

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