最新記事

中国

グーグルよ、「邪悪」になれるのか?――米中AI武器利用の狭間で

2019年3月25日(月)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

不透明感を増すグーグル(写真は米カリフォルニア州マウンテンビューの本社) Stephen Lam- REUTERS

「邪悪になるな」という理念を守るために中国を撤退したグーグルが、再び中国市場に参入しようとしているとして、米軍トップが「中国軍に恩恵を与える」とグーグルに警告。背景には米中のAI武器利用競争がある。

米軍制服組トップがグーグルに警告

米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が、米上院の軍事委員会公聴会でグーグルの中国における事業活動に触れ、「間接的に中国人民解放軍に恩恵を与えている」と批判した。3月17日のCNNやロイターあるいは中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」などが、一斉に報じた。

それらによれば、米軍当局は「グーグルが米・国防総省の事業から撤退しておきながら、中国市場に再参入しようとするのは適切でない」とみなしており、結果的に「中国による民間技術の軍事面への転用を容易にする役割をグーグルが果たしている」と批判しているとのこと。

それに対してグーグルの広報担当者は「米・国防総省のいくつかの事業から撤退したものの、完全撤退ではなく、一部での関与は続けている」と述べ、撤退した理由に関しては「社内の反対意見を受けたため」とCNNの取材に回答している。

中国のメディアはさらに、グーグルが米・国防総省から撤退した事業の中には、小型無人飛行機(ドローン)の軍事作戦能力向上などに向けた人工知能(AI)活用の事業があることに焦点を当てている。

中国「次世代AI発展計画」発布の年に北京に「グーグルAI中国センター」

というのも、グーグルの中国市場再参入のコアになっているのはAIだからだ。

2017年12月13日、グーグルは北京に「グーグルAI中国センター(Google AI China Center)」を設置している。

この年はまさに習近平政権が「次世代AI発展計画」を発布した年だった。

今年2月12日付のコラム「中国のAI巨大戦略と米中対立――中国政府指名5大企業の怪」で述べたように、国務院(中国人民政府)は2017年7月8日、国発〔2017〕35号として「次世代AI発展計画(中国語では新一代人工智能発展規画)」を発布している。これは2015年5月19日に国発〔2015〕28号として発布された「中国製造2025」を補強する計画だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中