最新記事

航空機

737MAX、修正プログラム完成でも運行再開は見通せず 米国主導の認証制度に変化も

2019年3月29日(金)12時36分

FAAにプレッシャー

過去何十年にもわたり、大国も小国もFAAのリードに従ってきた。だが今回、2件目の墜落事故を受けてFAAが出した「運航停止を指示する根拠はない」とする見解には従わない国が多かった。

実際、主要国の航空当局の間で、FAAだけが独自の立場を取っていた。まず中国が、そしてシンガポール、英国、カナダが運航を停止。トランプ米大統領が同型機の運航停止を表明したのは、その後だった。

運航再開に向けて動くFAAとボーイングには今、海外から厳しい目が向けられている。中国はここでも、規制当局の「序列」をひっくり返し得る立場にある。

中国は25日、737MAX型機の耐空証明の申請受付を停止した。

カナダと欧州、そしてトルコは、FAAによる承認後でもパッチの検証に必要なだけ時間をかける方針を示唆している。従来であれば、FAAが承認すれば他国もそれに追随することが多かった。

規制当局間の力関係の変化は、問題の早期解決を目指すボーイングにとって障害となると、専門家はみている。

また、世界各国の航空当局が慎重な姿勢を強めることで、米国とカナダ、欧州が新型機の安全認証を認め合う相互システムに依拠している現在の仕組みにも広範な影響が出るだろう。

新型機の認証に際し、FAAのような規制当局が重要部分を担うことで、他国の当局は同じ作業を繰り返さずに結果を承認できたため、コストと時間の節約になっていた。

コスト抑制と安全性の確保に貢献していたこのような世界的「信頼」の仕組みは、米国が適切な行動を取らなかったという疑念を各国が持ったことで揺らぐ恐れがあると、コンサルティング会社ティール・グループのアナリスト、リチャード・アボウラフィア氏は指摘する。

「新型機のシステムやイノベーション、開発のコストを押し上げる」

777Xの認証に影響か

カナダのガルノー運輸相はロイターに対し、昨年10月の墜落事故を受けて既にFAAの先を行く対応を取っており、安全認証のハードルを再び上げる用意があると話した。

「いつも(米国と)同じように行動する訳ではない。一定の安全の基準を超える必要がある。そのこと自体に何の問題もない」と、ガルノー氏は語った。

墜落事故の余波は、737型シリーズ以外にも広がる可能性がある。開発中の大型機ボーイング777Xの認証についても、欧州当局がより厳しく審査し、遅れる可能性があるとの見方を、ローンチカスタマー(最初に大規模発注を行う顧客)である独ルフトハンザ航空のカーステン・シュポア最高経営責任者(CEO)は示す。

「全体的に、各国当局は米国の認証を受け入れることにより慎重になるだろう。インドネシアとエチオピアで起きた悲しむべき事故がもたらした産物だ」と、同CEOは記者団に話した。

(Eric M. Johnson記者、 David Shepardson記者、Allison Lampert記者、翻訳:山口香子、編集:久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中