最新記事

北朝鮮

ハノイ米朝会談、なぜ金正恩は何千キロもの「鉄道旅」を選んだ?

2019年2月28日(木)16時54分

北朝鮮の金正恩委員長はベトナムのハノイでトランプ米大統領との会談に臨む。写真はベトナムのドンダン駅に列車で到着した金委員長。2月26日、ドンダンで撮影(2019年 ロイター/Stringer)

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を乗せ、ベトナム国境の駅ドンダンに26日到着した特別列車は、赤と黄色の機関車に引かれていた。その車体には、中国国有鉄道のロゴがはっきり描かれていた。

トランプ米大統領との会談のため、金委員長が開催国へ外遊するのは今回で2度目だが、どちらも中国から提供された輸送手段でやって来た。これは国際舞台に立て続けに登場することになった若き指導者が、より強力な近隣の大国にいかに頼っているかの表れだ。

金委員長は昨年6月、中国の国旗が描かれた中国国際航空の旅客機に乗り、史上初となる米朝首脳会談の開催地シンガポールへ向かった。

南北国境の板門店で行った文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領との2度の会談を除き、中国の習近平国家主席との初会談、そして今回のトランプ大統領との2度目の会談では、ともに中国が提供した機関車が使われた。

「これは習主席からのフルサービスだ」と、韓国の情報機関にいたNam Sung-wook氏は言う。「金委員長は、中国による特別待遇がなければ現地まで行けなかった」

習主席との会談のため、これまで4度訪中した金委員長は、いずれも特別列車で北京へ向かった。客車を引いたのは中国製の緑色の機関車「東風11Z型」。車体には国有鉄道会社の中国鉄路総公司のロゴが描かれ、少なくとも3つの異なる登録ナンバーが記されていたことが、メディアの写真から明らかになっている。

2018年3月の初訪中で使用されたのは、中国高官を乗せた客車を引くために使われる機関車だった。韓国メディアは、北朝鮮との国境沿いにある中国の丹東で、金委員長の列車に接続されたと報じた。

金委員長がベトナム入りした際の機関車は赤と黄色の「東風4型」で、23日に北朝鮮から中国に入った際に使用されていた11Z型よりも旧式のものだった。

中国が機関車をいつ、どのような形で北朝鮮に提供したのかは不明だ。

中国外務省の陸慷報道官は、特別列車をけん引する機関車が途中で変わったこと、さらに中国が機関車を北朝鮮に提供したのかどうかについて聞かれると、そのようなことにあまり注意を払っていないと回答した。「機関車が変更されたかどうかによって、状況に対する評価に何か特別な意味を与えるのか私には分からない」と、26日の定例記者会見で語った。

報道官はその一方、中国が金委員長の列車移動に「輸送保証」を提供したことを明らかにした。詳細は語らなかったが、列車がスムーズに中国を通過することを保証したものとみられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メローニ伊首相、ゼレンスキー氏と電話会談 緊急支援

ビジネス

街角景気11月は7カ月ぶりに悪化、物価高に懸念 ク

ワールド

中国レアアース輸出、11月は急増 米中首脳会談受け

ビジネス

中国銅輸入量、11月は2カ月連続減 価格高騰で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中