最新記事

ベトナム

バンコクで不明のベトナム人権活動家、警察官装ったベトナム軍軍人が拉致? タイ当局も関与か

2019年2月15日(金)18時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

バンコクで消息を絶ったトゥルオン・ドゥイ・ナット氏(中央)と、政府に捜査協力を訴えた妻のカオ・テイ・スアン・プアンさん(右) ナット氏のフェイスブックから

<米朝首脳会談が2月下旬に開催されるベトナムは北朝鮮同様、一党独裁制による政治的弾圧が行われる国。海外に渡航し亡命しようとした人権活動家は当局によって拉致されたのか?>

タイのバンコクで1月26日以降行方が不明となっているベトナム人の人権活動家でブロガーでもあるトゥルオン・ドゥイ・ナット氏(55)について、ベトナム人の妻が政府に捜索を依頼する書簡を送り、協力を求めていることがわかった。

その一方でナット氏の行方不明はベトナム人治安当局者がタイ警察官を装って実行した「拉致」であり、ナット氏がすでにベトナムに連行され、当局の監視下におかれている可能性が極めて高いことが関係者の情報で明らかになった。

こうしたことからナット氏行方不明事件はタイ当局も関係した国際的な人権侵害事案としてクローズアップされてきており、ベトナム政府と同じようにタイ政府にも説明責任が求められている事態となっている。

ナット氏が寄稿していた「ラジオ・フリー・アジア」によると、ナット氏の妻カオ・テイ・スアン・プアンさんは2月9日付けで送付した書簡で、「夫のナットは1カ月以上前に理由を告げずにダナンの自宅から姿を消した。1月25日にバンコクの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)へ赴き、その翌日の26日に行方不明になった」と事実関係を記している。そのうえで「タイ政府はナットの行方不明に一切関係していないとしているが、うわさではベトナム治安当局者によって拉致され、ベトナム国内に密かに連行されているという。夫ナットの安全と健康状態について心配している」として、ベトナム政府へ行方に関する情報提供、捜索協力を依頼している。

ナット氏の知人によってFace Bookにアップされたこの書簡はベトナム中央政府、外務省、警察省、国防省、夫妻の居住地であるダナン市の警察本部宛てになっている。

書簡ではベトナムと各国の報道機関に対してもナット氏の行方不明事案への関心と注目を呼びかけている。

タイ警察を装って拉致か

在外ベトナム人人権組織によると、1月26日にバンコク北郊の大規模ショッピングモール「フューチャーパーク」内のアイスクリーム店付近でナット氏は「拉致」されたというが、この際、タイ警察の警察官の服装をした複数の人間に身柄を確保された可能性が高いことが分かった。

人混みの中でナット氏が簡単に身柄を拘束された経緯が不明だったが、タイ警察の制服を着用した人物らだったので、大声を上げて騒ぐこともなく、抵抗もせずに「求められたであろう同行」に応じたとみられている。

もし少しでもナット氏が不信感や恐怖心を抱けば騒ぐなり、抵抗するなりして周辺の人々の注意を引いたことは確実だが、これまで参考となるような目撃情報が出てこないのは、タイ警察官を装った「拉致」だったからとみられている。

そして「拉致」の実行犯については、ベトナム情報機関員あるいは警察官などの可能性が指摘されていたが、ベトナム軍の軍人である可能性が指摘されている。

正規の軍人がタイにどのような経路で入国し、どういった手段でタイ警察官の制服を入手し、いつナット氏を連行して、どのようにベトナムに連行して帰ったのかなど、依然として謎は残されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダ、重要分野の関税撤廃で米国と交渉=担当相

ビジネス

米ブロック、AI活用で人員ほぼ半減へ 株価急伸

ワールド

デンマーク、3月24日に総選挙実施 グリーンランド

ワールド

米副大統領「物価高は民主党の責任」、激戦州ウィスコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中