最新記事

日韓関係

「日韓首脳は状況打開のために早期の会談を」

THE SUMMIT WANTED

2019年2月1日(金)17時30分
朴辰娥(ジャーナリスト)

――文大統領は「日本が謙虚になるべき」と発言し、日本政府は「韓国が最初に国際法違反を犯した責任を日本に転嫁している」と応酬した。

文が「日本が謙虚になるべき」と発言したのは歴史的な観点についてだ。この発言の真意については、李洛淵(イ・ナギョン)首相がより明確に発言している。つまり、「日本は歴史に対して謙虚になるべきである一方、韓国は未来に対して謙虚になるべきである」と。

韓国政府の基本的な対日姿勢は1998年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領が日本の国会で行った演説で述べられている。つまり成熟した未来志向の関係ということであり、これに対して当時の小渕恵三首相は日韓の歴史問題に触れた。

――両国政府による非難の応酬が高まる一方で、韓国の世論は比較的おとなしいと日本ではみられている。

最初の段階では韓国メディアも静かだったが今は違う。確かに、文の年頭会見で韓国の記者は誰も日韓関係について質問しておらず、文自身も日本人記者から質問されるまでは何も語らなかった。この状況が示しているのは、今の青瓦台(韓国政府)において日韓関係が優先順位の高いアジェンダではないということだろう。あるいは、日韓関係の問題に対して、確たる対応策がないということかもしれない。

――文政権の親北路線が対日外交に影響していると思うか?

日本は昨年の平昌冬季五輪以降、(東アジア外交において)疎外感がある、という見方ができる。例えば、かつては北朝鮮の核開発問題に対処するための日米韓調整会合(TCOG)があったが頓挫した。そして昨年来、北朝鮮が(米韓などに対して)融和姿勢に転じ協議を始めた一方で、日本は拉致問題を抱えているために北朝鮮の言動を信頼できないでいる。現在のこじれた日韓関係は、両国政府の対北朝鮮外交の違いを反映していると思う。ただ、2度目の米朝会談の進展次第では(北朝鮮情勢をめぐって)日韓の協力が必要になるときが来るだろう。歴史問題はもちろん重要だが、一方で少し新しい日韓関係を構築する必要性も生まれている。

――現状の打開策は。

繰り返しになるが、両国の首脳が会談を行い、胸襟を開いて議論することを願っている。歴史問題やレーダー照射のたぐいの問題は実務者レベルで解決できる問題ではなく、首脳レベルでのみ解決が可能だ。そのために、復活させることで合意したシャトル外交を活用して、両国間にオープンな対話ができるチャンネル構築の機会が生まれることを期待したい。文政権の国家安保戦略には「日本とは、歴史的な諸課題の解決と未来志向の関係のために実質的な協力に努める」と規定されている。この精神にのっとってほしい。

<本誌2019年01月29日号掲載>

※2019年1月29日号(1月22日発売)は「世界はこう見る:日韓不信」特集。徴用工、慰安婦、旭日旗、レーダー照射......。「互いを利してこそ日韓の国力は強まる」という元CIA諜報員の提言から、両国をよく知る在日韓国人の政治学者による分析、韓国人専門家がインタビューで語った問題解決の糸口、対立悪化に対する中国の本音まで、果てしなく争う日韓関係への「処方箋」を探る。

ニューズウィーク日本版 健康長寿の筋トレ入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月2日号(8月26日発売)は「健康長寿の筋トレ入門」特集。なかやまきんに君直伝レッスン/1日5分のエキセントリック運動

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ポルシェ、傘下セルフォースでのバッテリー製造計画

ビジネス

米テスラ、自動運転死傷事故で6000万ドルの和解案

ビジネス

企業向けサービス価格7月は+2.9%に減速 24年

ワールド

豪首相、イラン大使の国外追放発表 反ユダヤ主義事件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中