最新記事

中国

Huaweiめぐり英中接近か──背後には華人富豪・李嘉誠

2019年2月22日(金)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

李嘉誠は、今さら説明するまでもないだろうが、1928年に広東省に生まれ、1940年に戦火を逃れて香港に渡った。極貧の中、高校を中退してセールスマンとなり、香港フラワーという造花を売り出したところ大当たりし、1958年に不動産業に転身して長江実業有限公司を創立。大成功を収め、1985年には香港島の電力供給を独占する香港電灯を買収するという、スケールの違う巨大ビジネスに着手し始めた。

香港が1997年に中国に返還されるまで香港を統治していたのはイギリスだ。

李嘉誠の事業は、自ずとイギリスへと拡張していった。

中文情報によれば、現在イギリスの35%以上の天然ガス、30%以上の電力は李嘉誠の手中にあり、イギリス経済は李嘉誠がどう動くかによって決まっていくと言っても過言ではないほど李嘉誠の財力に頼っているようだ。

そもそもイギリスのThree UKは李嘉誠の会社、長和電信のイギリス法人だ。Three UKは、Huaweiと20億ポンド(1ポンド=144円)のネットワーク契約を結んでいる。 

これまでにも、李嘉誠の長江実業とその傘下の多国籍企業ハチソン・ワンポア(和記黄埔)はイギリスに、国を動かすほどの莫大な投資をし続けてきた。中文圏では「イギリスの半分は李嘉誠が掌握している」という言葉で表現されるほど、イギリス経済には圧倒的な影響力を持っている。O2だろうとBTだろうと例外ではない。

2018年が終わろうとしていたころ、中国大陸の各企業は、2018年の企業実績を次々に発表していったが、その中で、なんと、あの李嘉誠がHuaweiに200億人民元(1人民元=16.5円)を投資して、すでにHuaweiの5Gシステム購買契約を済ませていたことが分かったのである。

慌てたのはイギリスの通信関係の企業だ。

アメリカの要求通りに(基本的に)Huawei製品(の一部)を排除すると、歯切れ悪く宣言していたイギリスは、いきなり掌を反(かえ)すように、Huawei受け入れに回ったのである。

崩壊するかファイブ・アイズ構図

イギリス政府国営のNCSC (National Cyber Security Centre、国立サイバーセキュリティセンター)さえも、「Huawei製品のリスクを抑える方法があると結論づけた」と宣言したと、イギリスメディアは報じている。

スパイ活動に関しては、その昔からMI5やMI6(軍諜報部第5、6課)などで有名なイギリスは、新たにNCSCを設立してサイバー空間におけるスパイ活動調査に力を入れている。もしアメリカが言うようにHuaweiが安全保障上の情報を抜き取って中国政府に報告しているのだとすれば、イギリスにとっては最も「興味深く」徹底調査をする領域のはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中