最新記事

中国

米中交渉──中国「技術移転強制を禁止」するも「中国製造2025」では譲らず

2019年2月14日(木)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平国家主席はトランプのその窮地を知りつくしているので、先ずは「アメリカ産大豆を500万ドル多く買ってもいい」という親書を劉鶴副首相に持たせトランプに渡した。1月31日のことである。

大豆の生産地アイオワ州は、習近平がまだ河北省正定県の書記だった1985年に、訪米代表団の一員として訪問した縁の地だ。その時の知事が、現在の駐中国アメリカ大使ブランスタッド氏である。だからトランプの票田であるアイオワ州の大豆生産農家の事情には詳しい。

従ってトランプの弱みをつき、大豆に焦点を当てたわけだ。

もっとも、そういう中国自身も、実は豚の餌にする大豆が不足して豚が痩せてしまい困窮している養豚場が少なくない。そこで、あたかもトランプに救いの手を差し伸べるような格好をしながら、自国の利益を計算しているわけだ。そこは抜け目がない。

とは言え、結果的に通商面ではアメリカに譲歩を見せている中国だが、「中国製造2025」に関しては一歩も譲らない。

「中国製造2025」は生命線

習近平にとって、国家戦略「中国製造2025」は国運を賭けた生命線だ。

それを完遂するために、憲法を改正して国家主席の任期さえ撤廃してしまった。

だというのにアメリカは、その国家戦略の撤回を求めている。「中国政府が資金面などで最先端ハイテク企業の発展を支援するのは国際社会における公平な競争を歪める」というのが、アメリカ側の理由だ。

これは「内政干渉が過ぎる」として、中国はアメリカの要求を拒否し続けている。

拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を考えているのか』で毛沢東時代まで歴史をさかのぼって書いたのは、「中華民族の偉大なる復興」という政権スローガンが持つ意味を深くえぐりたかったからだ。つまり、習近平の決意のほどを分析したかったという側面がある。それを考察すれば、習近平が譲歩するか否か、米中のハイテク戦争の行方がどうなるかが、浮かび上がってくるにちがいないと期待した。

習近平政権になってから、毛沢東の執念であった「両弾一星」(最初は原子爆弾・水素爆弾・人工衛星、後に核爆弾・弾道ミサイル・人工衛星)戦略の特集番組をシリーズで組みクローズアップさせているが、習近平はこの毛沢東の執念を「中国共産党一党支配体制維持の核心的精神」とみなすようになり、憲法を改正して国家主席の任期制を撤廃してまで「中国製造2025」貫徹を決断していることが見えてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の証取、優良上場企業のリファイナンス支援 審査

ビジネス

欧州、ユーロの国際的役割拡大に備えを=オーストリア

ワールド

キューバの燃料事情は「危機的」とロシア、米の締め付

ビジネス

ユーロ圏投資家心理、2月は予想上回る改善 25年7
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 10
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中