最新記事

イギリス

ブレグジットめぐり英企業「議会は党派対立棚上げを」 合意なき離脱の混乱へ対策室設置も

2019年1月29日(火)17時07分

英企業の間で、政治家に欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る論争をやめ、秩序ある離脱で合意するよう嘆願する声が高まっている。ロンドンの英議会前で17日撮影(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

英企業の間で、政治家に欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る論争をやめ、秩序ある離脱で合意するよう嘆願する声が高まっている。大企業の中には、「合意なき離脱」になった場合の大混乱に備え、「シチュエーションルーム」(状況分析室)を設置したところも現れた。

法律で定められたEU離脱期日の3月29日まで9週間を切ったが、英政府内では、離脱をどのように実施するかはおろか、離脱すべきかどうかについてすら合意が得られていない。

英議会は15日、メイ英首相がEUとの間でまとめた、経済的混乱を最小化するための約2年間の移行期間設置を含む離脱協定案を否決した。これにより、このままいけば離脱協定なしに英国がEUから離脱する可能性が高まった。合意なしに離脱すれば、港湾で大渋滞が起き、サプライチェーンが寸断され、金融市場に激震が走る恐れがある。

メイ首相が提出したブレグジット代替案の議会採決を29日に控え、英国の海運業界は政治家に対し、言い争いをやめてメイ首相がEUとの間でまとめ上げることのできるような合意に同意するよう求めた。

「党派政治はひとまず脇に置き、大局的な見地からこの国にとって最良なものは何かを考えることがわれわれに求められている」

英国海運会議所のボブ・サンギネッティ最高経営責任者(CEO)はロイターにこう訴えた。

海運大手モラー・マースクや船舶会社P&Oなど200社が加盟し、英国のモノの通商の95%を仲介している同会議所では、メイ首相は否決された離脱協定案で最も議論を呼んだアイルランドとの厳格な国境管理を避けるためのバックストップ(安全策)を削除するか、それに期限を設けるべきだとしている。

「離脱協定案の有効な代替案がなく、われわれは、ビジネスや製造業、消費者に甚大な被害と混乱をもたらす合意なきシナリオに向けて進み続けている」と、サンギネッティ氏は話す。

元英海軍代将でもあるサンギネッティ氏の発言は、世界5位の経済国である英国がEUから合意なしに離脱する可能性について、英企業がどれほど懸念を深めているかを示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイとカンボジアが攻撃停止で合意、トランプ氏が両国

ビジネス

FRB現行策で物価目標達成可能、労働市場が主要懸念

ワールド

トルコ大統領、プーチン氏に限定停戦案示唆 エネ施設

ワールド

EU、来年7月から少額小包に関税3ユーロ賦課 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中