最新記事

イギリス

原発建設、日立撤退で立場強める中・仏企業連合 英国のエネルギー安全保障と脱炭素化戦略は風前の灯火

2019年1月21日(月)11時07分

日立製作所が英国での原発新設計画凍結を発表したことで、同国の新規原発を手掛ける企業として残った仏電力公社EDFと中国広核集団は、資金調達方法を巡る英政府との交渉で立場が強まった。写真は2018年、英ヒンクリー・ポイント原子力発電所(2019年 ロイター/Toby Melville)

日立製作所が英国における原発新設計画凍結を発表した。これにより、英国の新規原発を手掛ける企業として残った仏電力公社EDFと中国広核集団(CGN)は、資金調達方法を巡る英政府との交渉で立場が強まる。

昨年11月の東芝に続き、日立も資金面で耐えられないとの理由で英原発事業から撤退することになっただけに、資金調達をどうするかは非常に重要な要素になっている。

EDFとCGNが希望しているのは「規制資産ベース(RAB)モデル」と呼ばれる方式で、出資者は原発建設開始時点から一定のリターンを受け取ることができることから、投資リスクが小さい。従来ならば、リターンを得るのは原発が完成する何年も先だ。

しかしこのやり方で進めるには、英政府が既に高額になっているエネルギー料金や建設が遅れがちな原発計画に不満を募らせている議会と消費者を納得させる必要がある。

グリニッチ大学のスティーブン・トーマス名誉教授(エネルギー政策)は「問題は、国民に全てのリスクを押し付けるRABモデルというものが果たして議会に受け入れられるかどうかだ。ただしそれが採用されない場合、投資家はいなくなるだろう」と述べた。

EDFは、サフォーク州の「サイズウェルC」原発建設でこのRABモデルを採用してほしいと英政府と交渉している。サイズウェルCプロジェクトには、CGNも20%の権益を保有する。

またCGNはエセックス州のブラッドウェルにも原発を建設する方針で、EDFが33.5%の権益を持つ。

クラーク英民間企業・エネルギー・産業戦略相は、サイズウェルCやブラッドウェルの原発を念頭に置いて「新たな原子力(発電)がより競争的なエネルギー市場で成功できるとわたしは強く信じているが、そうであるなら将来のプロジェクトの資金を賄う上で新しいやり方を考えなければならない」と議会に訴えた。これは、日立が原発新設計画断念を発表した後の発言だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド4月自動車販売、大手4社まだら模様 景気減速

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む 市場予想下回る

ワールド

米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も

ワールド

アングル:米とウクライナの資源協定、収益化は10年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中