最新記事

人種差別

ガーナで撤去された「差別主義者」マハトマ・ガンジーの像

2018年12月22日(土)15時00分
キャサリン・ハイネット

インドの独立を勝ち取った偉人というイメージから世界中にガンジーの像が設置されているが…… Mansi Thapliyal-REUTERS

<著作で黒人に差別的な言葉を多用したことなどから、アフリカでは「人種差別主義者」と見られているマハトマ・ガンジーの像が、ガーナ大学から撤去された>

12月12日、ガーナの首都アクラのガーナ大学のキャンパスからマハトマ・ガンジーの像が撤去された。設置されてまだ2年半しかたっていなかった。

ガンジー像の撤去を求めるオンライン署名活動を主導したガーナの研究者たちによれば、ガンジーは「人種差別主義者」だった。著作でアフリカの黒人をインド人より劣ると評したり、差別的な言葉を多用したりしていたという。欧米では、イギリスの植民地支配と戦い、インドの独立を勝ち取った偉人のイメージが強いが、アフリカでの評判は違うのだ。

署名の請願文によれば、キャンパスから人種差別的なシンボルを撤去するのは世界の潮流だ。請願文が指摘するように、例えばアメリカのエール大学は昨年、「カルフーン・カレッジ」の名称を変更した。由来になった19世紀の政治家ジョン・カルフーンは奴隷制存続論者だったからだ(新しい名称は、科学者のグレース・マリー・ホッパーにちなんだものになった)。

「ガーナ大学は世界クラスの大学を目指している」と、請願文は記す。「奴隷制、アパルトヘイト(人種隔離政策)、白人至上主義の牙城だった過去を持つ大学でも、世界クラスの大学では問題のある人物の像やシンボルが撤去され始めている」

ガーナ大学で法律を学ぶナナ・アドマ・アサレ・アデイは、ガンジー像の撤去を歓迎している。「ガンジーの像をキャンパスに設置するということは、その主張すべてに賛同することを意味する。ガンジーが(人種差別を)支持していたのなら、その像を残すべきではないと思う」と、英BBCに語っている。

「差別主義者」の像に対する逆風は、アメリカのキャンパスでも強まっている。8月にはノースカロライナ大学チャペルヒル校で、19世紀の南北戦争時に奴隷制存続派だった南軍の兵士の像が抗議活動家たちによって引き倒されている。

4月には、バージニア大学で同大学の創設者でもある第3代大統領トマス・ジェファソンの像に「人種差別主義者+レイプ犯」という落書きがされた。ジェファソンは奴隷制廃止を主張した半面、生涯の間に600人以上の奴隷を所有していた。差別主義者は、たとえ建学の父であっても許されないようだ。

<本誌2018年12月25日号掲載>


※12月25日号(12月18日発売)は「中国発グローバルアプリ TikTokの衝撃」特集。あなたの知らない急成長動画SNS「TikTok(ティックトック)」の仕組み・経済圏・危険性。なぜ中国から世界に広がったのか。なぜ10代・20代はハマるのか。中国、日本、タイ、アメリカでの取材から、その「衝撃」を解き明かす――。

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米雇用好調で7月利下げ観測

ワールド

米ロ首脳が電話会談、ウクライナ早期停戦巡り協議 ロ

ビジネス

米6月雇用、14.7万人増と予想上回る 民間部門は

ワールド

米政権、次期FRB議長探しに注力 「多くの優秀な候
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 8
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 9
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中