最新記事

フィリピン

「イスラム国」に占拠されたミンダナオ島 戒厳令延長を決めたドゥテルテの狙いは?

2018年12月13日(木)19時10分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2017年夏、戦争状態にあったミンダナオ島マラウィ Romeo Ranoco - REUTERS

<内戦さながらの戦闘が繰り広げられたミンダナオ島。武装勢力から解放して1年経過したが戒厳令を解除しないドゥテルテの狙いは?>

フィリピンの上下両院は12月12日、南部ミンダナオ島に出されている戒厳令をドゥテルテ大統領の要請に基づき、2019年12月末日まで延長することを圧倒的多数で可決、承認した。戒厳令は昨年末に2018年12月末まで延長することが決まっていたものので、今回さらに1年間再延長されることになった。

そもそもこの戒厳令は、2017年5月にミンダナオ島南ラナオ州の州都マラウィが中東のイスラムテロ組織「イスラム国(IS)」と関係があるとされるイスラム武装組織と、地元の犯罪組織「マウテ・グループ」によって武力占拠され、国軍部隊と戦闘状態になった際に出された。

当時ドゥテルテ大統領はマラウィ周辺の治安維持と軍・警察による作戦を柔軟に行えるようにと戒厳令を出した。2017年末までの期間限定とすることで、かつて戒厳令下で数々の人権侵害事件が起きたマルコス元大統領政権下の「暗黒時代」への逆戻りを懸念する人権団体や野党の声を抑え込んできた。

そして、2017年10月にマラウィが軍や警察によって解放され、武装組織のメンバーの多くは殺害もしくは逮捕され、壊滅状態となった。

しかし軍・警察による「残党がマラウィを解放前に脱出して各地で活動を再開したり、メンバーを集めたりして再結集の動きがある」という情報などを根拠に戒厳令の解除は見送られた。

そして2017年12月の戒厳令の期限切れ前には「ミンダナオ島の治安状況は依然として不安定である」との理由で2018年12月末まで延長されていた。

上下両院で圧倒的多数で再延長可決

フィリピン憲法では戒厳令に関する事案は上院、下院が合同で審議、投票することに規定されており、12日は政府側の趣旨説明のあと上下両院による合同投票が行われた。その結果下院では賛成223票、反対23票、上院では賛成12票、反対5票、棄権1票と、圧倒的多数で戒厳令の再延長が承認された。

戒厳令の再延長を求めるドゥテルテ政権側は「軍や警察による情勢分析、情報判断という総合的な判断に基づく」と2017年末の延長時とほぼ同様の抽象的な説明を繰り返すのみ。議会も慎重な審議とはほど遠い状態で可決、承認と一気に進んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 6
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 8
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中