最新記事

移民

「国境なき医師団」の移民救助船「アクエリアス」を伊当局が差し押さえ──病原菌を海にバラまいた容疑

Italy Orders Ship Seizure Over Contamination Fears

2018年11月21日(水)16時03分
シャンダル・ダ・シルバ

「移民や難民は、過去にもHIVや感染症に関するデマの犠牲になってきた。我々はこうしたデマを、HIV感染者と不幸から逃れてきた移民の両方に対する、いわれなき差別として非難する」とゴールドは述べた。

MSFも声明を出し、「船上廃棄物の不法投棄を根拠にアクエリアス号の差し押さえを要求しているイタリアの司法当局を強く非難する」と述べた。「不当で根拠のない措置であり、海上における医療的・人道的救命活動を犯罪に貶めることだけを目的にしたものだ」と批判した。

MSFによれば、アクエリアス号の差し押さえやイタリアにある銀行口座の凍結が命じられる前から、カターニア検察当局による「船上の廃棄物処理に関する長期間の捜査」が行われていたという。捜査では、「特に食べ残しや、救助された移民の衣服、さらには同船内での医療活動から出る廃棄物が重点的に調査された」とのことだ。

MSFは、難民の捜索と救助に当たるアクエリアス号について、「廃棄物処理を含む入港中の作業は、常に標準的な手順に従っていた」と主張している。

犯罪にされた人道活動

「2015年にMSFが捜索救助活動を開始して以来、関係当局からこれらの手順が問題とされたことはなく、公衆衛生上危険だとの注意を受けたこともない」

MSFは、イタリア当局に「全面的に協力する意志はある」としながらも、「検察当局の解釈には疑問を持っている。非合法な廃棄物処理を行うことを目的とした犯罪活動に関わっていたとの告発には、断固として異議を唱える」と主張した。

MSFは、検察当局による「不正確あるいは誤解を招きかねない」告発に対して、不服申し立てを行うつもりだと明らかにした。MSFのイタリア事務局長、ガブリエレ・エミネンテはこう述べる。「我々は、これまで採用してきた作業手順に関して、事実を明らかにし、説明責任を果たす用意は十分にある。しかし、当医師団の人道的活動は正当かつ合法的なものであることは、いま一度強く訴えたい」

MSFによれば、ヨーロッパに渡るため危険な地中海横断を企てて亡くなった人の数は、この1年間だけでも2000人以上に上る。それでも生命の危険を冒して海を渡る移民は後を絶たない。MSFは、海上警備当局との協力で、これまでに8万人以上の人々を救助してきたが、その間「各国の法律および国際法には全面的に従ってきた」と述べている。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中