最新記事

移民

トランプが中間選挙でやり玉にあげる中米の移民キャラバン 今も米国目指して北上中

2018年11月6日(火)17時00分

10月29日、午前4時を少し過ぎたころ、流れ星が光る空の下で、中米からやって来た移民たちは荷物を肩に担ぎ、がたがたの歩道を歩き始めた。25日、メキシコのマパステペクからピヒヒアパンに向かう途中、道で休むグレンダ・エスコバルさんと息子のアドナイ君(2018年 ロイター/Ueslei Marcelino)

午前4時を少し過ぎたころ、流れ星が光る空の下で、中米からやって来た移民たちは荷物を肩に担ぎ、がたがたの歩道を歩き始めた。最初は数人ずつ、だがすぐに奔流のような人の流れとなって、次のメキシコの町を目指して進む。

彼らは、真っすぐにためらいなく歩いた。話す人はほとんどいない。彼らのコンパスは北の方角、米国を指している。

その日の彼らの目的地は、約48キロ離れたピヒヒアパンの町。中米から米国入りを目指して北上している数千人規模の移民集団(キャラバン)の、次の中継地だ。トランプ米大統領は、こうしたキャラバンの動きに激怒し、メキシコ国境を閉鎖して中米への経済支援を打ち切ると警告している。

ホンジュラスから来たアドナイ君(5)とデンゼル君(8)の兄弟は、まだ眠い様子で、マパステペクの町からピヒヒアパンに向けて出発した。母親のグレンダ・エスコバルさん(33)は、アドナイ君の手をしっかりと握っている。友人のマリアさんは、デンゼル君のTシャツをつかんでいた。

明かりを持っている人は誰もいない。道は穴ぼこだらけで、油断できない。ほんの数メートル先を見るのにも、反対側の車線を走ってくるトラックのヘッドライトだけが頼りだ。

数分歩くと、若い男性がひざを抱えて道端に横たわっていた。岩に足首をぶつけて、痛くて立てないのだという。

エスコバルさんと息子たちは、ずっと先まで続く人の流れに遅れないよう、そのまま通り過ぎた。

エスコバルさんの最終目的地は、ロサンゼルスだ。知り合いは1人もいないが、「夢の中で神様が、そこに向かいなさいとおっしゃった」のだと言う。

2016年の米大統領選で不法移民の取り締まりを公約に掲げて勝利したドナルド・トランプ氏は、11月6日の中間選挙を前にこのキャラバンを選挙戦の格好の材料として取り上げ、共和党への支持をあおっている。

とはいえ、キャラバンに参加しているのは、暴力や貧困を逃れて中米から米国に向かう年間数十万人の移民のほんの一部でしかない。

キャラバンの参加者数の推計は、3500人程度から7000人超までと幅がある。道程の厳しさから途中で諦めたり、メキシコで新生活を築くことに決めたりして、すでにキャラバンから去った人もいる。一方で、メキシコ南部で新たに加わった人も多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウェイモ、自動運転タクシーをミネアポリスなど3都市

ワールド

米CDCサイトが一変、ケネディ長官の反ワクチン主張

ビジネス

補正予算後の国債残高、悪化せず=経済対策で片山財務

ビジネス

ワーナー買収、パラマウント・コムキャスト・ネトフリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中