最新記事

アジア

スリランカ政局混迷、大統領が首相解任し前大統領を後任に 中国が政権交代画策との声も

2018年10月29日(月)15時30分

10月26日、スリランカのシリセナ大統領(写真)は、ウィクラマシンハ首相を解任し、ラジャパクサ前大統領を後任に据えた。シリセナ大統領は経済面での失策などを解任の理由としたが、ウィクラマシンハ氏は解任を違法とし、自身が引き続き首相だと主張するなど、混乱が深まっている。昨年3月にモスクワで代表撮影(2018年 ロイター)

スリランカのシリセナ大統領は26日、ウィクラマシンハ首相を解任し、ラジャパクサ前大統領を後任に据えた。シリセナ大統領は経済面での失策などを解任の理由としたが、ウィクラマシンハ氏は解任を違法とし、自身が引き続き首相だと主張するなど、混乱が深まっている。

シリセナ大統領は27日、11月16日まで議会を停止した。ウィクラマシンハ氏の支持者はこれについて、議員が同氏への支持を表明できないようにするための措置だと批判した。

2005─15年に大統領を務めたラジャパクサ氏は28日に発表した声明で、司法の独立を守り、法と秩序を確立する暫定政権を立ち上げると表明。議会に政権への支持を求めた。

スリランカはラジャパクサ前大統領の下で中国から多額の融資を受けて大規模インフラプロジェクトを進めた。中国に対する債務が膨らんだ結果、戦略港湾の運営権を中国に譲渡する状況に陥っている。

隣国インドや欧州連合(EU)、米国はシリセナ大統領に憲法を順守するよう促しているが、中国はラジャパクサ氏に首相就任の祝意を伝え、ウィクラマシンハ氏の支持者からは、中国が政権交代を画策したとの声が上がった。中国の当局者は内政干渉を否定した。

ラジャパクサ氏の首相就任後、同氏とつながりのある労働組合はウィクラマシンハ政権の閣僚が事務所に入るのを阻止するため政府の建物を封鎖しており、28日には石油資源開発相だったアルジュナ・ラナトゥンガ氏が事務所に入ろうとした際、同氏のボディーガードが発砲し、1人が死亡、2人が負傷した。

米国務省は28日、関係各方面に暴力を控えるよう促すと同時に、シリセナ大統領に議会を直ちに再開し、「民主的に選ばれた国民の代表が政権指導者を支持する責務を果たせるように」すべきだと訴えた。

これまでのところ、議員の多くはラジャパクサ氏への支持を表明しておらず、ジャヤスリヤ国会議長は28日、シリセナ大統領に宛てた書簡で、「議会の信任を得た他の人物が議会内で浮上するまで」ウィクラマシンハ氏の権利を守るよう求めた。

シリセナ大統領は国民に向けた演説で、政権交代の措置は「完全に合憲であり、法律の専門家の助言に沿ったものだ」と説明した。

ラジャパクサ氏の支持者は議員の支持集めに動いており、ウィクラマシンハ氏支持派の2人がラジャパクサ氏への支持を表明した。ラジャパクサ氏に近い関係筋は、さらに多くの議員が同氏支持に乗り換えるとの見方を示した。

[コロンボ 28日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中