最新記事

憎悪犯罪

男性に対する憎悪攻撃がヘイトクライムとして認められる?

Misandry—the Hatred of Men—Could Become Hate Crime

2018年10月17日(水)18時06分
サム・アール

男女が逆なら許されないような攻撃も、被害者が男性なら許されてしまうことも PeopleImages/iStock.

<女性差別がダメなら男性差別もゴスもパンクもと、ヘイトクライムの対象は際限なく広がりかねない。どこで線引きするべきか>

イングランドとウェールズでは今、「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」の法的定義を見直し、新たにミソジニー(女性嫌悪)や年齢差別のほか、ミサンドリー(男性嫌悪)を含めることを検討している。法律の見直しや勧告を行う独立組織の法律委員会が、ヘイトクライム法を改正する必要性や、ジェンダー関連の罪を新たに含めるべきかを検証している。

9月上旬に見直し作業が始まったときの焦点は、女性に対する嫌悪や敵意に基づく攻撃をヘイトクライムに加えるべきかどうか、だった。だが10月16日までには、年齢差別やミサンドリー、さらにはゴスやパンクなど特定のサブカルチャーに対する偏見にまで審議の範囲が広がっていることが明らかになった。

米メディアには、男性が女性にドジで怠慢な下等動物のように扱われる侮辱的なCMが溢れている、と訴える動画


法律委員会の広報担当者が本誌に語ったところによれば、「最初はあえて対象を広くしている。だが理論上は(サブカルチャーがヘイトクライム法の保護対象に)含まれることはありうる」と語った。

女性だけが守られるのは不公平か

ヘイトクライムは、個人的な特性に対する偏見を動機とした言葉による攻撃、もしくは身体的な攻撃と定義されている。

現在のところ、イングランドとウェールズのヘイトクライム法で保護されている個人的な特性は、障害、トランスジェンダー、人種、宗教、性的指向の5つ。

保護対象の拡大は、批判も呼んでいる。女性憎悪を含める見直しが始まったとき、その実現に一役買ったステラ・クリーシー下院議員は、次のように宣言した。「これは、我々が女性たちの味方だというメッセージだ。女性嫌悪は人生の一部ではなく、許されるものでもないことを、私たちは国として初めて表明した」

女性嫌悪をヘイトクライムに含めるなら、男性嫌悪も含めるべきだ、という話に当然なった。だが、両方を法律に盛り込んだら、両者は同等の「罪」と見なされてしまいかねないという懸念がある。

女性が男性からハラスメントや差別を受ける割合は、逆の場合よりもはるかに高い。イギリスの最新の犯罪統計では、2017年になんらかの形で性的暴力を経験した女性は、男性の5倍に上る。

(翻訳:ガリレオ) 

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中