最新記事

災害

【写真特集】フィリピン被災地の「凶兆(シグノス)」を捉えて

SIGNS OF THE TIMES

2018年10月5日(金)18時00分
Photographs by VEEJAY VILLAFRANCA

2013年11月に台風ハイエンが直撃したフィリピン中部レイテ島の都市タクロバン。シャッター・スピードを遅くして、 現場の混乱と動揺を見る者に伝える 

<被災後の強制移住や治安悪化、貧困による人身売買――過酷な環境よりも厄介なのは自然災害がもたらすこうした「人災」だ>

熱帯地域に位置するフィリピンは自然災害が多いことでも知られる。特に台風は年にいくつもが直撃し、普段は水不足に悩む農村を水没させ、家や畑を流し去る。その後には、また容赦なく日照りが繰り返される。

観測史上最大級の猛威を振るったのが13年の超大型台風ハイエン。6000人以上の人命が奪われ、600万人が家を失った。とりわけ被害が大きいのは沿海部や島しょ部の住民だ。

フィリピン人フォトグラファー、ビージェイ・ビラフランカはこうした現実を直視しようと被災地を撮影した。苛烈な環境よりも厄介なのは、自然災害がもたらす「人災」だ。被災後の強制移住や治安の悪化、貧困がもたらす人身売買といった現実も写真に収められている。

写真集名の『シグノス』とはフィリピンの伝承の「凶兆」のこと。嵐が来る前、漁師や祈禱治療師が村に警告を与えるときに用いる言葉だという。伝統的な報道写真を超えてこうした象徴的な概念を作品に取り入れることで、気候変動が農村にもたらすさまざまな側面を写し取りたい――時に多重露光などの手法を用いた繊細な表現から写真家の決意が伝わってくる。

Photographs from the book "Signos" (MAPA books) by Veejay Villafranca


pptyphoon02.jpg

津波に襲われたフィリピン中部・東サマルの町ヘルナニ


pptyphoon03.jpg

土砂崩れの跡からごみをあさる人(タクロバン)


pptyphoon04.jpg

被災家屋に残された家族写真(タクロバン)


pptyphoon05.jpg

身元不明の遺体2000体以上が葬られた墓地(タクロバン)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米アトランタ連銀総裁、任期満了で来年2月退任 初の

ワールド

トランプ氏、12日夜につなぎ予算案署名の公算 政府

ワールド

イランの濃縮ウラン巡る査察、大幅遅れ IAEAが加

ワールド

世界原油需給、26年は小幅な供給過剰 OPECが見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中