最新記事

イギリス

「合意なき離脱」へのカウントダウン その時何が起こるのか

Brexit Countdown: 6 Months to Go and No Deal in Sight

2018年10月1日(月)19時11分
デービッド・ブレナン

EU指導者たちの記念写真撮影で、早くもブレグジットした?イギリスのメイ首相(9月20日、オーストリアのザルツブルクで) Leonhard Foeger-REUTERS

<EUとの「離婚条件」がまとまらないまま離脱期限を迎えれば、経済に大打撃の可能性も>

イギリスのEU離脱(ブレグジット)の期限とされる2019年3月29日まであと半年を残すだけになった。大きな問題は、離脱協定でEUと合意できるのか、それとも「合意なき離脱」になってしまうのかという点だ。

イギリスとEUが無事何らかの協定を結ぶのであれば、10月18日までに双方が合意しなければならない。すぐ目の前だ。交渉はほぼまとまっているとの噂もあるが、ブレグジットの枠組みを巡る議論はイギリス政界を引き裂いている。EU側の交渉担当者と加盟諸国は少なくとも足並みをそろえているように見えるが、メイ英首相と与党・保守党は出口戦略をまとめきれずにいる。

最近のイギリスは、EUとの離婚条件も決めないまま別れる「合意なき離脱」に向けて転がり落ちているようだ。当初提案されていた2年間の調整期間もないまま、イギリスはハードランディングを余儀なくされかねない。合意なき離脱は、航空便の欠航や国境検問所の封鎖、通貨ポンドの暴落に加えて、食品や医薬品の輸入が滞るといった事態も招きかねない。

メイは先ごろ、合意なき離脱に備えて食料供給確保を担当する大臣を任命した。

先が見えない経済界

イギリスの欧州連合離脱省の報道官は本誌に対し、イギリスとEUは必ず離脱条件で合意に至るとの見方を述べた。「だが責任ある政府として、あらゆる可能性に備えた計画立案を行っている」と報道官は言う。「合意なき離脱に備えるのは、個人や企業に対する短期的な混乱のリスクを最小化するためのものだ」と報道官は述べた。

合意なき離脱に備えた計画が進んでいるとはいうが、実際に必要なインフラが間に合うかというと危ういものだ。それでもメイは、合意なき離脱のシナリオはけっして「世界の終わり」ではないと言う。

メイの楽観的なコメントは英企業にとってほとんど慰めになっていない。規模を問わず多くの企業がすでに、ビジネス上の大きな決定を先送りすることを検討したり、ブレグジットの衝撃から身を守るために人員や支出の削減を始めている。大手企業の中には、海外に事務所や人員を移し始めたところもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時800円安 3連騰後で利

ビジネス

イケア、NZに1号店オープン 本国から最も遠い店舗

ビジネス

ステランティスCEO、米市場でハイブリッド車を最優

ビジネス

米ダラー・ゼネラル、通期の業績予想を上方修正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 8
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中