最新記事

日米貿易戦争

日本車メーカー、トランプが高関税や数量規制なら死活問題 日米首脳会談を注視

2018年9月26日(水)19時14分

日米間の貿易不均衡にいらだってきた米政府は、7兆円を超す対日貿易赤字の圧縮を日本に求めている。複数の関係筋によると、米側は今回の日米通商協議(FFR)の前段階で、非公式に日本からの自動車輸出削減と米現地生産の増加を要請してきたという。

ただ、日本メーカーにとって、米現地生産の増強はかなり高いハードルだ。一般的に、米国での完成車工場新設には年産24万台規模で1000億円ほど投資が必要とされる。

SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは「通常フル生産でも黒字に約5年はかかる」と指摘、「生産車種のロットが小さかったり、緻密な生産技術が必要な車種なら黒字までさらに時間を要し、固定費の上昇にもつながりかねない」と話す。

また、高級車の輸出比率が高い日本メーカーにとって、対米輸出の削減は大幅な減益要因となるばかりでなく、国内の雇用問題にも直結しかねない。

25日朝(日本時間同日夜)、ニューヨークで茂木敏充経済財政相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が2回目となるFFRを開催。終了後、茂木経財相は、両国の貿易を促進する方策や枠組みについて「基本的な認識は一致した」と表明。詳細な中身は「首脳間で議論し、合意した上で発表したい」と語った。

このため、自動車業界関係者の注目は、26日に予定されている安倍晋三首相とトランプ大統領の日米首脳会談に集まっている。

関係筋によると、日本側は米国が自動車に対する25%の関税について、適用回避を約束すれば、農産品を中心にした市場開放などについて、米国との2国間交渉に応じる姿勢を米国側に示し、理解を求める交渉スタンスを取っているという。

ただ、11月の米中間選挙を前に、下院で共和党が過半数を失うとの情勢判断が広がっており、トランプ大統領が米国内での支持拡大を目指し、日本に対して強い姿勢を打ち出す可能性を危惧する日本政府関係者の声もある。

首脳会談の決着内容によっては、日本メーカーの業績に大きな影を落とす展開も予想される。

(白木真紀 取材協力:竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦)

[東京 26日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、和平協議「幾分楽観視」 容易な決断

ワールド

プーチン大統領、経済の一部セクター減産に不満 均衡

ワールド

プーチン氏、米特使と和平案巡り会談 欧州に「戦う準

ビジネス

次期FRB議長の人選、来年初めに発表=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中