最新記事

北朝鮮

トランプ政権の米空軍が「金正恩暗殺」秘密訓練......ウッドワード暴露本

2018年9月13日(木)11時40分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

朝鮮人民軍、特殊部隊の訓練を視察する金正恩 KCNA-REUTERS

<米朝間の緊張が高まっていた2017年10月、米空軍が金正恩の暗殺訓練を実施していたことが、ウッドワードの暴露本で明らかに>

トランプ米政権の内幕を描いた『恐怖(FEAR)』が11日、出版された。著者は、ウォーター・ゲート事件でニクソン大統領(当時)の関与を暴いた米紙ワシントン・ポストの著名記者ボブ・ウッドワード氏だ。

報道によれば、同書は米朝の緊張が高まっていた2017年10月、米空軍が北朝鮮と地形が似ている中西部ミズーリ州の高原で、金正恩党委員長を暗殺する訓練を極秘に実施していたと記述。有事に備える選択肢のひとつとして実施されたとしている。

非核化を巡る米朝対話が進展しているいま、朝鮮半島で戦争が勃発する可能性は昨年に比べはるかに低くなっている。しかし実際のところ、昨年までも米国が北朝鮮を先制攻撃する可能性は極めて低いと考えられていた。

もちろん、朝鮮半島有事のリスクはいまだに存在する。北朝鮮と韓国との間で戦争の危険が高まったのは、2015年8月だ。北朝鮮が非武装地帯に仕掛けた対人地雷に、2人の韓国軍兵士が接触。身体の一部を吹き飛ばされる事件が起きた。

参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士...北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

デイリーNKジャパンの分析では、北朝鮮側に韓国軍兵士を傷つける意図はなかった。にもかかわらず事件は起き、事態がエスカレートしてしまったのだ。

北朝鮮と米国の間では、戦争のリスクは存在しても、それは「より管理された」状態に置かれてきたと思う。オバマ前政権下においても、「影のCIA」と呼ばれる組織が対北先制攻撃を提言していた。

結局、それは米国の主要な戦略に組み込まれることはなかったようだ。空軍が秘密訓練を行っていたという類の話も、今のところは聞かない。

しかしトランプ政権は、少なくとも前政権よりも、対北先制攻撃に踏み込んでいたように見える。それも当然と言えば当然だ。金正恩氏は核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を手中にしつつあったのに、米国にできることと言えば、効果の定かでない経済制裁だけだったのだから。

前述書によれば、金正恩氏に対する「暗殺計画」は「選択肢のひとつ」だったとされる。しかし、訓練を経て「選択肢」に磨きがかかり、情勢の緊迫度が増せば、それが使われる可能性は高まっただろう。タイミングと展開次第で、朝鮮半島で本当に戦争が起きるかもしれなかったのだ。実際にいま振り返ると、2017年10月というのは、非常に微妙な時期だった。その詳細については、次の機会に述べることにしたい。

参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン、今週末にもイスラマバードで再協議か パキ

ビジネス

ナフサ供給上の問題ない、国内で必要な量を確保と認識

ワールド

中国習主席、中東安定へ法の支配訴え 米イスラエルを

ワールド

英BP、第1四半期の石油取引部門は「極めて好調」に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 4
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目の…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 9
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 10
    BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音楽市場で…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中