最新記事

トランプ

側近の相次ぐ裏切りと政権内部からの抵抗でトランプは一人

Report: Trump Now Only Trusts His Kids

2018年9月7日(金)17時40分
グレッグ・プライス

もう自分の子供しか信じられなくなったトランプ Chris Wattie-REUTERS

<匿名の政権インサイダーに暴露記事を出され、最も忠実なはずの側近らに裏切られたトランプ、人間不信に拍車がかかるのも当然か>

この世で信用できるのはもう自分の子供たちしかいない──ドナルド・トランプ米大統領は、匿名の政府高官の論説が9月5日の米紙ニューヨーク・タイムズに掲載されたとき、そう悟ったようだ。同高官は、トランプには「道徳観念がない」などと批判し、彼が国を滅ぼさないよう政権幹部や高官が内部から悪政を止めている、と暴露した。

以前は、トランプには信頼できるごく少数の側近がいた。だが、米紙ワシントンポストが知人の話として伝えたところでは、彼はもはや自分の子供たちしか信用できないと確信したと言う。

トランプは2016年の米大統領選で勝利に貢献した長女イバンカとその夫ジャレッド・クシュナーをホワイトハウス入りさせた。トランプ一族の不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」の経営は、長男ジュニアと次男エリック、40年超にわたってトランプ一族の金庫番を務めてきたアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者(CFO)に任せた。

元側近は寝返り

政治経験のないイバンカとクシュナーをホワイトハウス入りさせたうえ、彼らを女性の権利や中東和平交渉、刑務所改革といった中核的な政策の責任者にしたことで、トランプはさんざん批判された。

しかもイバンカとクシュナーは、トランプ周辺への権力集中と政敵の排除を狙ってメディアに情報をリークした疑惑を持たれている。彼らと激しく対立して標的にされたよい例が、2017年8月に更迭されたスティーブン・バノン前首席戦略官だ。

トランプが部下の忠誠心を重視することは有名だが、彼は最近、最も忠実だったはずの側近に相次いで裏切られた。元顧問弁護士で汚れ役もやったマイケル・コーエンは8月21日、ニューヨーク連邦裁判所で選挙資金法違反など8つの罪について有罪を認めたうえで司法取引に応じ、トランプの不倫相手とされる元ポルノ女優ら2人に「口止め料」を「トランプの指示で」支払ったと証言した。

事実なら、トランプは当選するために選挙資金法に違反したことになる。トランプが司会を務めた人気テレビ番組「アプレンティス」に出演した黒人女性で、昨年末に更迭されたオマロサ・マニゴールド元大統領補佐官も、8月14日に暴露本を出版し、トランプの精神状態は衰えているなどと酷評した。

ワイセルバーグもトランプを裏切ったもようだ。彼はコーエンがトランプの指示で口止め料を支払ったとされる疑惑をめぐり、米検察当局の捜査協力に応じる代わりに刑事免責を受けた、と米メディアが8月24日に一斉に報じた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井物産、26年3月期は14%減益見込む 市場予想

ビジネス

エアバスCEO、航空機の関税免除訴え 第1四半期決

ビジネス

日銀、無担保コールレート翌日物の誘導目標を0.5%

ワールド

日韓印とのディール急がず、トランプ氏「われわれは有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中