最新記事

中国

中国アフリカ協力フォーラムで世界制覇を狙う──後押ししたのはトランプの一言

2018年9月4日(火)18時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国アフリカ協力フォーラム(9月3日、 北京)How Hwee Young/REUTERS

9月3~4日、アフリカ53カ国が出席して北京で中国アフリカ協力フォーラムが開催された。まるで「新国連」を形成したような勢いである。結束力を高めたのはトランプの一言だ。日本がどんなに拠出額で対抗しても勝てない。

まるで「新国連」を立ち上げたような勢い

9月3日に北京で開幕した中国アフリカ協力フォーラムは、まるで習近平国家主席が宗主国となって、中国が頂点に立つ異形の「新国連」を設立したような勢いだった。中国と国交を結んでいない唯一の国、エスワティニ(旧称:スワジランド)を除いたアフリカ53ヵ国の首脳らが人民大会堂を埋め尽くしたその姿は、「圧巻」という印象を参加者に与えたにちがいない。

すっかり中国に取り込まれている国連のグテーレス事務総長が習近平を絶賛する形でアフリカ53ヵ国に呼びかける演出も、「異形の新国連」を彷彿とさせた。
 
特に体型的に堂々たる巨漢ぞろいのアフリカ諸国の首脳たちが座る座席は、中国で毎年開催される全人代(全国人民代表大会)の時の着座間隔と違い、3人に1人くらいの幅を持たせている。前後にも何割増しかの奥行きがある。ふんぞり返るのに十分だ。さながら王座に座っているような感を与える。
 
「いま新しい世界が開けた」と習近平は挨拶で述べたが、それは絵空事ではないという危機感を覚えた。習近平はアメリカの「一国主義」に対抗して「多国間の自由な貿易」を呼びかけている。アフリカ53カ国が中国側に付けば、国際社会における発言権も違い、世界制覇も夢ではない。
 
アフリカへの拠出資金も今年は600億米ドル(約6兆6000億円)。この数値を習近平が口にした時には、すべての列席者の目が輝き、どよめきが起きた。
 
拍手が最も大きかったのは、習近平が「中国アフリカの団結を誰も破壊できない!中国アフリカは運命共同体だ!」と叫んだ時だった。

トランプの一言「くそったれ国家!」がアフリカ諸国の背中を押した

トランプ大統領は今年1月11日、ホワイトハウスで移民制度について議員らと協議した際「くそったれ国家(shithole countries)から、なぜ多くの人がここに来るのか」などと侮辱する言葉を使い、アフリカ諸国やカリブ海の島国ハイチから来る移民の多さに不満を示した。アメリカのメディアが出席者の話として伝えた。
 
トランプは翌日、「これは私が使った言葉ではない」とツイッターで否定したが、しかし一方では、「アフリカなどではなく、ノルウェーのような国からもっと人を招くべきだ」と指摘したとされ、明らかに「白人は歓迎するが、黒人は歓迎しない」と明言したことは否めない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ウ和平交渉で立場見直し示唆 トランプ氏

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中