最新記事

災害

インドネシア・スラウェシ島の地震・津波で死者384人、行方不明29人、負傷者540人 被害はさらに拡大の懸念

2018年9月29日(土)18時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

地震のあったインドネシア・スラウェシ島には3mの津波が押し寄せた。 (c) KOMPASTV/YouTube

<バリ島、ロンボク島などで火山活動や地震が相次ぐインドネシアでまた大地震が発生した──>

インドネシア・スラウェシ島中スラウェシ州で9月28日午後6時2分ごろ(日本時間同日午後7時2分ごろ)マグニチュード7.4の大きな地震が発生、地震に伴う津波も沿岸部に押し寄せた。
 
インドネシア国家災害庁(BNPB)は9月29日午後3時までに判明した数字として死者384人、行方不明者29人、負傷者540人であることを明らかにした。
 
津波被害のあった中スラウェシ州の州都パルやドンガラ県ドンガラ市の海岸沿いには犠牲者の遺体が散乱している、として今後犠牲者はさらに増える可能性があるとした。
 
29日の夜明けとともに現地の被害状況が次々と明らかになり、ドローンで上空からの被害状況を伝えた民放「メトロテレビ」の映像によると、家屋の大半が倒壊あるいは津波で流された海岸沿いなどで道路や橋も大きな被害を受けており、被災地に陸路で到達することが困難な状況がみてとれた。

倒壊した家屋や流された建物周辺には白い布や青いビニールをかぶせた犠牲者とみられる遺体が数多く、収容されずに放置されてた。

インドネシア政府は29日早朝から国軍、国家警察、国家捜索救助庁などの部隊を現地に派遣しているが、被災地のパル空港の滑走路が地震で被害を受けているため、南スラウェシ州のマカッサル空港あるいは北スラウェシ州のゴロンタロ空港まで進出し、そこから陸路あるいはパル空港で唯一離発着が可能なヘリコプターに乗り換えて現地入りを目指しているという。

地震はカリマンタン島でも観測

インドネシアの気象気候地球物理学庁(BMKG=日本の気象庁に相当)によると、地震の震源地は中スラウェシ州のドンガラ市の北東約27kmで震源の深さは約11Kmと推定されている。地震は南スラウェシ州の州都マカッサルやマカッサル海峡を隔てた西のカリマンタン島の東カリマンタン州サマリンダでも観測され、建物などから慌てて逃げだす市民の様子が伝えられた。

地震発生直後にBMKGは津波警報を発令したとしているが、1時間以内にこの警報は解除されている。実際に津波が来た時刻と津波警報が解除された時間の関連は現段階では明らかになっていない。また地震発生を伝える一部報道では「津波の心配はない」とのBMKGの情報を伝えるなど錯綜している。
 
地震発生直後から被害の大きかった州都パルや海岸沿いのドンガラ市では市民が地震発生直後から携帯電話などで撮影した建物から避難する人々や道路に座りこむ通行人などの様子、さらに津波が押し寄せる様子が次々とインターネットのツイッターやフェイスブックにアップされた。
 
29日午後11時前から始まったBNPBの記者会見ではこれまでに入った死傷者の数字が新たに発表されたが、担当者は「あくまでこれは地震による死傷者で津波の被害者は含まれていない。海岸沿いに遺体が多数あるとの報告を受けている」と悲壮な表情で明らかにした。

今後救援部隊が現地入りして、アクセスが困難な海岸地域で活動を開始すれば死傷者の概要が判明すると思われるが、時間を要するとともに相当数の犠牲者が予想されている。


津波が押し寄せるようすを伝える現地メディア KOMPASTV / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB3会合連続で0.25%利下げ、 反対3票 来

ビジネス

FRBに十分な利下げ余地、追加措置必要の可能性も=

ビジネス

米雇用コスト、第3四半期は前期比0.8%上昇 予想

ワールド

米地裁、トランプ氏のLAへの派兵中止命じる 大統領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中