最新記事

CIAに学ぶ最高のリーダー論

格言を公表し「不倫」で失脚した名将軍を反面教師にせよ

LEARNING BY NEGATIVE EXAMPLE

2018年8月22日(水)18時30分
ニューズウィーク日本版編集部

失脚後、反省の言葉も口にしているが…… JOHN W. ADKISSON/GETTY IMAGES

<イラク戦争の功労者、米軍のデービッド・ペトレアス将軍の「格言」から学べる「リーダーシップ」の教訓。本誌8/21発売号「CIAに学ぶ最高のリーダー論」特集より>

デービッド・ペトレアスは泥沼のアフガニスタン・イラク戦争で最も称賛された将軍の1人だ。ジョージ・W・ブッシュ政権下ではイラク駐留米軍の司令官として治安回復に貢献。その後、バラク・オバマ大統領(当時)にアフガニスタン駐留米軍司令官に指名され、さらにCIA長官に転じた。しかし、女性との不倫発覚で出世の階段を転げ落ち、辞任に追い込まれた。

軍時代の高い評価から将来の大統領候補とも言われたペトレアスは失脚前、ニューズウィーク誌上で自らの「リーダーのルール」を公表した。猛スピードで昇進した彼の「原則」には一定の説得力がある。ただし、イラクで治安維持のために残虐な手法を取ったのではないか、という疑惑が辞任後に報じられるなど、その成功の裏には影もちらつく。今となってみると突っ込みどころもある「反面教師」ペトレアスの言葉から学べることは──。

◇ ◇ ◇

「部隊の最前線に立って範を示せ。リーダーはそのリーダーなりの成績しか残せない。部隊が並なのはリーダーが並だからだ」

「リーダーは明確なビジョンと、達成可能で戦略的な『ビッグアイデア』を示せ。このアイデアを組織全体および他の全ての利害関係者に伝えよ」

「リーダーは部下にエネルギーを与えよ。『酸素泥棒』になるな」

〈教訓〉「ビッグアイデア」「エネルギー」......「最も成功した将軍」としての気負いがにじむ。気負い過ぎたリーダーが、感情のはけ口として不倫に走ることは多い。

「あらゆるルール、手順、政策には例外がある。例外の実施を決めるのはリーダーだ。そしてリーダーはそれを説明せねばならない」

〈教訓〉米軍のジェームズ・スティール大佐は03年から05年にかけて、イラクでスンニ派を弾圧するシーア派の「死の部隊」に関与。空挺師団長だったペトレアスはスティールが関わる残虐行為を容認していた、と疑われた。「例外」が暴走した結果、汚れた手で治安維持を実現したのかもしれない。

「謙虚たれ。あなたが指導する人々は、既に地上戦の経験がある。『よく聞きよく学ぶ』べし」

「チームの一員になれ。チームの勝利も失敗もリーダーのものだ」

「階級に頼るな。論理に基づく説得力ではなく階級に頼るリーダーは、思考力かコミュニケーション能力に問題がある。状況認識力の向上のため、信頼できる部下の助言を活用せよ」

〈教訓〉失脚の原因となった不倫相手は自伝の執筆者。そして予備役の少佐でもあった。部下である彼女の助言を活用し過ぎたのだろう。確かに「勝利も失敗もリーダーのもの」だ。

【参考記事】企業もスパイ機関も同じ CIAが説く意外な最強リーダー論

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中