最新記事

トラベル

富裕層しかいないはずのファーストクラスで多発する備品泥棒

First-Class Sticky Fingers

2018年8月18日(土)15時10分
ジュリアン・コソフ

提供品は機内でご利用ください(エミレーツのファーストクラス) Phil Noble-REUTERS

<機内提供品をくすねる金持ち客の多さに航空会社は困惑>

ファーストクラスやビジネスクラスで空の旅を楽しむ乗客といえば、高給取りや富裕層ばかり。にもかかわらず近年、航空会社を悩ませているのが、金持ち客による窃盗の蔓延だ。機内用の高級アメニティー品が、次々と盗難被害に遭っている。

高級ブランケットやパジャマ、ブランド香水などのアメニティーを提供しても、結構な頻度で勝手に持ち出されてしまう。そのため航空会社の中には、高級品の提供自体を見直しているところもある。

英ヴァージン航空は年初からこれまでに1700枚の軽量ブランケットを盗まれた。名物の「ジェット機形」ソルト&ペッパー入れに至っては、あまりに持ち出しが当たり前になってしまったので、皮肉たっぷりに「ヴァージン航空からの盗品」とのロゴを付けているくらいだ。

英タイムズ紙によれば、家具ブランド、ホワイト・カンパニーのサテンの縁取り付きブランケットを提供するブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、こうコメントしている。「お客様には毛布を盗るよりも昼寝を取ることをお勧めしています」

金持ち客は、あらゆる名品をくすねるだけではない。盗品をネットで売りに出し、小ガネまで稼いでいる。eベイのようなオークションサイトにはBAのブランケットやエティハド航空のビロードの膝掛けなどが出品されている。

ファーストやビジネスクラスの座席は何千ドルもかかるのだから、アメニティーを自由に手荷物に入れて持ち帰る権利がある――乗客は、そんな感覚をお持ちのようだ。「機内に固定していない物ならほぼ何でも、どこかの時点で持ち去られる」と、航空業界アナリストのヘンリー・ハートベルトは言う。

多くの航空会社は、はびこる略奪者たちに寛容な態度を取っている。何せ国際線でファーストやビジネスクラスの乗客が占める割合は全体の5.5%だが、そこから得られる収入は30%以上を占める。

だが、目に余る窃盗に静かな警告を発し始めた会社も。米ユナイテッド航空は機内メニューに、どのグッズが無料配布品で、どれが「購入してお持ち帰りいただける品」か明記している。

最上級の客であると同時に最大の窃盗団である彼らにどう対処するか、航空各社は視界不良のままだ。

<本誌2018年8月14&21号掲載>

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

クックFRB理事の弁護団、住宅ローン詐欺疑惑に反論

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、5万円割れ 米株安の流れ

ワールド

国連安保理、トランプ氏のガザ計画支持する米決議案を

ビジネス

米ボーイング、エミレーツから380億ドルの受注 ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中