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EVをより長く、より安く 開発に動くサプライヤー、投資規模は日本の国家予算の4割に

2018年8月9日(木)11時45分

米ボルグワーナーやアプティブ といった主要サプライヤー、さらにはノルウェーのアルミ大手ノルスク・ハイドロ、合成ゴム製造のトリンセオなどの企業は、EVの航続距離を延ばすための製品開発を進め、EVの販売拡大を阻む大きな障害に取り組んでいる。

サプライヤー側では、自動車メーカーが開発の初期段階で彼らのテクノロジーを採用してくれることを願っている。そうすれば、類似の製品を複数のメーカーに販売できるからだ。

EV開発には定番のアプローチが存在しないため、自動車メーカー各社はそれぞれ独自の道を歩んでおり、サプライヤーにとっては、パーツの選択どころか、素材の選択に至るまで影響を及ぼすまたとないチャンスが訪れている。

コネクター製造のTEコネクティビティで輸送ソリューション担当副社長を務めるアラン・アミーキ氏は、「最終的には、この高電圧市場においても規格化が進むことになるだろうが、まだその段階には至っていない」と語る。

そこでTEコネクティビティなどのサプライヤーは、顧客である主要自動車メーカーのエンジニアリング部門内に自社エンジニアによるチームを出向させている。こうすればサプライヤーは、顧客企業の内部で、既存の、あるいは開発中の自社製品・素材を売り込める。

顧客である自動車メーカーは、1回の充電での航続距離の延長、電磁干渉などの技術的な問題の解決、そしてさらに重要な点として今なお収益性の低い車両製造コストの削減に向けた方法を探し求めている。

セントポールに本社を置く3Mが自動車電化対応グループを設立したのは、世界各国の自動車メーカーが、主として中国を視野に入れて思い切った投資計画を展開していることを受けたものだ。中国政府は、2019年を起点に電気自動車の生産比率を拡大させる法律を制定している。

3MではEV関連テクノロジーへの投資内容を開示していないが、インゲ・チューリン執行会長は、「大きな、実に大きな投資だ」と話している。

3Mではすでに、米自動車大手ゼネラル・モーターズ の「ボルトEV」の航続距離延長のために温度管理テクノロジーを提供している。

台湾の自動車関連スタートアップである行競科技(Xing Mobility)は、高性能車種「ミスR」のバッテリー冷却用に3Mの「ノベック」を使っている。3Mは他の自動車メーカーもこのテクノロジーの採用を検討していると言うが、その社名は明らかにしなかった。

また3Mでは、携帯電話で用いられるフィルターのテクノロジーをEVに転用し、エネルギー消費量を抑えることによってバッテリーの持続時間を延ばしつつ、これまでより明るいインフォテイメント画面やメーターパネルを製造することを狙っている。

また3Mは、これも携帯電話由来の電磁干渉をカットするテクノロジーも持っている。これによって、たとえば送電線の下でも、さまざまな機能を犠牲にすることなくEVが走行できるようになる。

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