最新記事

格差社会

中国共産党「農村に帰ろう」Uターン戦略の見えない勝算

2018年7月25日(水)16時41分

「仕事を追って出て行く必要はない。機会はこの故郷にある」──。Gongxiang村の入り口に掲げられたバナーにはそう書かれていた。この誘致活動に今後5年間で最大5億元の予算が計上されると、村長Chen Deyuan氏は語った。

スローガンを考えたのは、政府向けに研修サービスを提供する地元起業スクールのWang Xin代表だ。

彼女のスクールでは、電子商取引や中国茶など、地元政府が重要だと考える分野の専門家を育成する訓練を行っている。同代表は、なるべく多くの人を呼び戻し、毎年数千人を訓練したいと話す。

だが、今年このスクールが就職フェア開催を支援し、簡単な製造業を中心に200以上の求人募集をした際、応募があったのはその半分以下だったと、Wang代表は言う。

それでも、地元当局者は楽観視している。

「3年以内に、故郷を去った人の8割が戻ってくるだろう」と、Chen村長は話す。

双峰県周辺の村を管轄する婁底市の楊懿文市長は、観光などの分野を振興する「特区」の設置などの大規模プロジェクトがあれば、追い風になると話す。

エクソダス

地元の雰囲気は、それほど歓迎的ではない。

「われわれの工場の従業員の大半は、中年かそれ以上だ」と、靴メーカーの九興控股(ステラ・インターナショナル)<1836.HK>が運営する工場で働く事務員He Shaさんは言う。工場の平均賃金は月額2700元だ。

都市部に住むミレニアル世代と、農村に住む家族や親戚との分断も大きい。

河南省の小さな町で育った27歳のLi Jinglongさんがその例だ。現在は米国で教育を受けたデザイナーとして活躍するLiさんに、故郷に戻る考えはまったくない。

Liさんは1年前、スタートアップ企業のブランディングやデザインを請け負う事業を起業するため、湖南省の省都・長沙市に拠点を移した。「もし田舎に戻ることがあるとしたら、それは郷愁からだろう」と、Liさんは話す。

問題の多くは地方の低賃金にある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中