最新記事

北朝鮮

金正恩は非核化するしかない

2018年7月9日(月)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

以下、Qは筆者、Aは元中国政府高官である。( )内は筆者の補足説明。

Q:中国は本当に北の非核化を望んでいるのか?

A:毫無疑問!(いかなる疑いの余地もない!当たり前だ!)

Q:なぜか?その理由は?

A:大きく分ければ三つある。

第一.北の核・ミサイルは、北京を向かないとも限らない。

第二.北が核放棄をしなければ、いずれ米軍は北を軍事攻撃するだろう。そうなると中朝軍事同盟がある中国は北を応援しなければならなくなる。しかし中国の軍事力は現段階では、とても米軍に及ばない。必ず負ける。となるとロシアが中朝側に付く可能性があるが、それは第三次世界大戦を招く。こういう事態は絶対に避けねばならない。また、中国がいま半島の戦争に巻き込まれれば中国の経済発展を著しく阻害するだけでなく、社会不安を招き一党専制の不安定要素となる。

第三.北が核保有国となれば、南(韓国)が必ず核を持とうとする。北と南が核を保有すれば、必ず日本が持とうとする。中国は日本が核保有国になることだけは絶対に避けたい。

Q:その第三は、日本の再軍備につながるからか?

A:その通りだ。

Q:アメリカ政府が機密解除した外交文書によれば、1971年に電撃的に訪中したキッシンジャーとの会談で、周恩来は日本の再軍備を強く懸念しているが、あれ以来、中国の日本に対する考え方は変わってないのか?

A:変わってない。今後も、これは絶対に変わらない。

在韓米軍に関しては

Q:ただ、在韓米軍の撤退に関しては、周恩来は最初は朝鮮戦争休戦協定違反だとキッシンジャーを責めたが、キッシンジャーが「いずれ撤退させる」と言いながら、「米軍が韓国から撤退すれば在日米軍が増強されることになるだろう」と言ったところ、周恩来はやや譲歩して、事実上、在韓米軍の継続を黙認した。あれは当時、中ソ対立があり、もし在韓米軍が撤退すれば、ソ連が北朝鮮を占領するだろうと考えたからだと思う。ソ連が崩壊した後、在韓米軍に対する中国の考え方は変わったか?

A:これは変わった。なぜなら激しく対立していたソ連が消滅したからだ。今は中国はロシアとは非常に仲が良く、北朝鮮に対しては利害が一致している。

Q:在韓米軍の撤退に関しても中露の意見は一致しているのか?

A:一致している。

Q:北朝鮮の非核化に関しても中露の意見は一致しているか?

A:一致している。

金正恩は「中朝で一つの参謀部」形成と発言しているが

Q:6月19日の三度目の訪中の夕食会で、金正恩は「中国の同志たちと一つの参謀部で緊密に連携していく」と言っているが......。

A:同じ日の首脳会談で習近平が何と言ったかを思い出してほしい。習近平は「半島の非核化実現に向けた(北)朝鮮側の立場と決意を高く評価し積極的に支持する」と言っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中