最新記事

北朝鮮

金正恩は非核化するしかない

2018年7月9日(月)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

金正恩(キム・ジョンウン)委員長 Jonathan Ernst-REUTERS

金正恩は習近平に段階的非核化と経済支援を取りつけたが、中国は北の非核化を絶対条件としている。北は訪朝したポンペオを強盗呼ばわりしたが、トランプの逆鱗に触れれば北は崩壊し、中国の支援がなければ破滅する。

習近平から経済支援を取り付けている金正恩

6月20日のコラム「中国はなぜ金正恩訪中を速報で伝えたのか?――米中間をうまく泳ぐ金正恩」に書いたように、習近平国家主席は金正恩委員長を中国側に引き寄せるのに必死だ。そのため金正恩が主張する「段階的非核化」に賛同し、非核化の方向に動く兆しを少しでも見せれば、それを後押しするために経済支援をする方向で動いている。

事実、6月28日、中国はロシアとともに、国連安保理の対北朝鮮制裁決議緩和案を安保理に提出している。アメリカが異議を唱えたため廃案となり、報道機関向けの緩和案として配布するだけに終わったものの、習近平が本気であることが見て取れる。

つまり、これまでの流れから見て、習近平は金正恩に対して以下の条件を付けた上で、「民生」という名の人道的支援の形で経済的支援をすることを約束していることになる。

(1)朝鮮戦争の休戦協定に終止符を打ち終戦協定に持っていき、朝鮮半島の平和体制を構築するに当たって、絶対に中国を外さないこと。

(2)必ず中国式の改革開放を進めること。「中国式の」という意味は、「中国の特色ある社会主義思想」に則って、「社会主義国家体制」を維持したまま、改革開放に移行することを示す(それは昨年10月の第19回党大会で決まった「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を貫き、中国共産党による中国の一党支配体制を維持するのに不可欠な論理であり、同じ共産主義国家の北朝鮮が崩壊すると中国国内における共産主義統治に対する信頼性が失われるので、習近平は困るからだ)。

(3)必ず核・ミサイルの開発を完全に放棄して、非核化を遂行すること。

中国はなぜ北の非核化を望むのか?──元中国政府高官を取材

日本のメディアあるいは研究者たちは、「中国が北の核保有を望んでいる」と考える人が少なからずいるように見受けられる。

しかし中国は、どんなことがあっても、北に核放棄をさせようと決意しているという。

本当だとすれば、なぜなのか。元中国政府高官を、直接取材した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中