最新記事

資源

中国リサイクル業者、廃プラ輸入停止で東南アジアに活路

2018年7月2日(月)13時39分

6月26日、中国がリサイクル用「廃プラ」輸入停止措置を発動したことで、多くの国内リサイクル事業者にとって、海外に活路を見出す以外の選択肢はほとんどなくなった。写真は中国の太倉金輝リサイクリングが経営するリサイクル工場。5日撮影(2018年 ロイター/Aly Song)

上海の北西約80キロにある煙のたちこめるプラントでは、マスクを着けた従業員が、振動する旧式の機械にプラスチック廃棄物の詰まった袋を投入し、廃プラを幅広い製品に使われるペレットへと変貌させていく。

処理工場が忙しく稼動している一方で、ここを経営する太倉金輝リサイクリングは処理能力の大半をマレーシアに移転させている。中国がリサイクル用「廃プラ」の輸入停止措置を今年、発動したためだ。

オフィス家具から光ファイバーケーブルの被覆材に至るさまざまな製品向けにペレットを販売してきたリサイクル事業者だが、廃プラの輸入停止により、必要な原料の約半分を失ってしまった。

廃プラの国内供給は確保が困難なため、多くのリサイクル事業者にとって、海外に活路を見出す以外の選択肢はほとんどない。

「この工業団地でペレット製造を続けているのは私たちだけだ。他の22社は工場操業を停止し、倉庫事業などを営んでいるだけだ。彼らの従業員は皆去ってしまった」と金輝のトーマス・ホー会長は語る。

中国政府による廃プラの輸入停止措置発動以来、金輝でも約400人いた従業員のうち、250人を一時解雇した。ただし、マレーシアでは新たに600人を採用している。マレーシア工場は、ほぼ完全に中国の機器やテクノロジーを使って設立された。

中国プラスチック廃棄物協会(CSPA)によれば、中国のリサイクル事業者のうち、東南アジアに専門スタッフや設備、廃棄物サプライチェーンを移転させた事業者は、全体の3分の1に当たる1000社を超えるという。金輝もその1つだ。

移転に伴う総投資額は約100億元(約1665億円)に上ると推定されているが、CSPAはその内訳を明らかにしていない。

中国が、プラスチックを含む24種類の廃棄物輸入を停止すると決めたのは昨年7月。経済の近代化を図るとともに、河川の流れを妨げたり、都市周辺に広がるゴミ廃棄場に未処理のまま放置されたりする国内廃棄物増大に対処する取組みの一環だ。

ただでさえ国内の廃棄物問題に頭を悩ませていた東南アジア諸国も、廃棄物輸入が増大する中で、中国と同じ問題に取り組まざるを得なくなっている。

中国による輸入停止措置は世界的なサプライチェーンの混乱を招いている。これまでは、主として欧州や米国からのプラスチック廃棄物700万トン以上が、毎年中国の港湾に運び込まれていたからだ。

従来の供給を閉ざされてしまった中国のリサイクル業者は、米国や英国といった国々からの廃棄物輸入を受けられる国外拠点に、処理能力400万トン相当の設備を新設・操業していると、CSPAのWang Wang会長は指摘する。それでも、リサイクル用の廃プラ供給は約600─800万トン減少しており、これを相殺するにはまだ不十分だ。

「CSPA加盟企業に関する限り、まだ十分な原料が得られないという状況だ」とWang会長は語る。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円、対ユーロで16年ぶり安値 対ドル

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期

ワールド

原油先物、1ドル上昇 米ドル指数が1週間ぶり安値

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中