最新記事

北朝鮮情勢

米海兵隊司令官「北朝鮮と戦う準備は出来ている」

2018年6月15日(金)17時00分
デービッド・ブレナン

沖縄駐在の第31海兵遠征部隊の司令官に就任したブローディ大佐 T. T. Parish/U.S. MARINE CORPS

<米朝首脳会談を終えたトランプは「北朝鮮はもう核の脅威ではない」と上機嫌だが、米海兵隊司令官は「変わらず戦争の準備は出来ている」と発言>

トランプ政権が米朝首脳会談を「成功」だったと自画自賛し、悦に入っている一方で、米軍は戦争に備えている──米海兵隊の部隊司令官がそう明かした。

沖縄の米軍基地キャンプ・ハンセンに駐在する第31海兵遠征部隊(MEU)の司令官に就任したロバート・ブローディ大佐は13日、米朝首脳会談の結果として米朝関係が好転した現状でも部隊は戦争に備えていると語った。米軍情報紙、スターズ・アンド・ストライプス紙が伝えた。

【参考記事】それでも韓国は防衛力を強化する

ブローディは、アメリカと北朝鮮が良好な関係にあろうとなかろうと、「(海兵隊は)今夜にでも戦う準備は出来ている」と語った。集まった隊員に「任務に向けて気合は十分なはずだ」と呼び掛け、部隊司令官として東アジアの安定と平和構築に尽力すると誓った。

ブローディはF-18/A戦闘機の元パイロットで、アフガニスタンでの対テロ戦争やイラク戦争にも参加。「トップガン」の通称で知られる米軍エリート養成機関、米海軍戦闘機兵器学校を卒業している。アジアの最前線に配置されている第31海兵遠征部隊は、今年3月に実戦配備されたステルス戦闘機F-35BライトニングIIと連携して作戦に参加する最初の部隊だ。

「核の脅威はない」の根拠は何もない

沖縄に司令部がある第3海兵遠征軍の司令官、ローレンス・ニコルソン中将は、米朝関係が「異常」な改善を見せていると認める。数カ月前には、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が核兵器の使用をちらつかせて非難の応酬を続けるのを、世界は緊張して見守った。

「いま何が起きているのか確信は持てない。大統領は米朝首脳会談を終えたばかりだ」と、ニコルソンは語る。「6カ月前には北海道の上空を北のミサイルが飛んでいたのだ。世界で何が起きているにしろ、情勢は変化している。どんな時だろうと海兵隊は戦う準備ができている」

米朝首脳会談が東アジアに平和と安定の新時代をもたらすかどうかは、まだ見えない。トランプは金正恩から「完全な非核化」を目指す約束を取り付けたと主張するが、専門家は合意文書では具体的には何も保証されていないと指摘する。それにもかかわらずトランプは、北朝鮮の脅威に対する最大の抑止力である米韓合同軍事演習を中止すると約束したようだ。

13日夜に出したツイートでトランプは、「北朝鮮にはもう核の脅威はない」と断言している。トランプはさらに金正恩をホワイトハウスに招待したと言っているが、それほど世界が変わったと思っているのは今のところトランプ政権だけだ。米軍にはぜひそのまま待機していてもらいたいものだ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サマーズ氏、公的活動から退くと表明 「エプスタイン

ワールド

米シャーロットの移民摘発、2日間で130人以上拘束

ビジネス

高市政権の経済対策「柱だて」追加へ、新たに予備費計

ビジネス

アングル:長期金利1.8%視野、「責任ある積極財政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中