最新記事

北朝鮮情勢

それでも韓国は防衛力を強化する

2018年6月14日(木)17時11分
クリスティナ・マザ

韓国南東部の浦項(ポハン)で4月に行われた米韓合同演習「フォール・イーグル」に参加中の韓国海兵隊 Kim Hong-Ji-REUTERS

<米朝首脳会談でトランプ米大統領は朝鮮半島の「完全な非核化」が進むといったが、それでも韓国は軍備を増強している>

先の米朝首脳会談でドナルド・トランプ米大統領は、朝鮮半島の非核化に向けた米朝対話が続く限り米韓軍事演習を中止すると表明したが、韓国は構わず軍の近代化と最新鋭のミサイルや戦闘機の購入を進めている。

韓国は北朝鮮からの脅威に絶えずさらされてきた。だからこそ文在寅現政権は北朝鮮との対話路線に舵を切った。敵対する北朝鮮とアメリカが対話のテーブルに着くことになったのも、韓国の仲介の功績が大きい。だが同時に韓国は、アメリカが米韓合同軍事演習の中止や、在韓米軍約2万8000人の撤退を決めた場合に備え、自力での防衛力強化も怠るまいとしている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、韓国は在韓米軍の縮小や撤退を想定し、とりわけ空軍と海軍の軍備増強を検討中だという。まずは米ロッキード・マーチンの最新鋭ステルス戦闘機F35を購入する予定だ。

「近い将来、ステルス性能を備えた第5世代戦闘機F22とF35は、戦闘に不可欠になる。最新の防空システムは第4世代を凌駕している」、とマーク・ウェルシュ元米空軍参謀総長は声明で述べた。

ポンペオに課題は山積み

韓国がF35の購入を最終決定したのは、ちょうどマイク・ポンペオ米国務長官が朝鮮半島の非核化の大部分は2年半以内に実現できると主張したときだ。信じていないということか。

専門家も、北朝鮮が核兵器を手放すまでに、ポンぺオにはやるべきことがまだまだあると指摘する。6月12日に史上初めてアメリカと北朝鮮の首脳が会ったシンガポールでの会談は、これからの長く複雑な外交交渉の始まりに過ぎない、と一部の専門家は言う。

「今回の会談は、非核化や米朝国交正常化の具体的な枠組みを示せなかったものの、米国務省が主導する対話継続を今後のプロセスに盛り込んだ。対話を率いることになるポンペオと他の外交官たちは、間違いなく多くの難題に直面する。非核化の過程を検証する方法について北朝鮮の合意を取り付けるだけでなく、米中韓それぞれが北朝鮮との2国間関係を深める中で、3か国が足並みをそろえるよう調整することも大きな課題だ」と、支援を通じて北朝鮮市民との関係構築を図るアメリカの非政府組織(NGO)全米北朝鮮委員会(NCNK)のアソシエイツ・ディレクター、ダニエル・ワーツは本誌に語った。

ワーツはこう続けた。「北朝鮮の核放棄に向けたプロセスを開始させるため、やるべきことはたくさんある。トランプは米朝首脳会談で北朝鮮が主要なミサイル実験場の廃棄に合意したと言ったが、これはささやかな出発点に過ぎない。その後は北朝鮮にウラン濃縮やプルトニウム抽出を凍結させ、核開発計画をすべて申告させるべきだ」

韓国が軍備増強の手を緩めるのは、それらの行方を見極めてからだ。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中