最新記事

統一朝鮮 本当のリスク

朝鮮半島「統一」の経済的恩恵は大きい、ただし......

2018年5月15日(火)11時55分
アンソニー・フェンソム

北朝鮮の手本は中国とベトナム

英経済調査会社キャピタルエコノミクスのアジア担当エコノミストのギャレス・レザーは、平和の見通しが、直ちに韓国経済を浮揚させるという期待に警鐘を鳴らす。画期的な南北首脳会談は、「この地域の市場と経済にとって、大きなリスクを取り除く助けになるだろう。しかし韓国経済に与える影響はそれほど大きくない」と、4月末のリポートで書いている。

何しろ実際の平和条約締結までにクリアしなければならない問題は多い。それに、これまでにも多くの南北合意が北朝鮮によってほごにされてきたから、「両国間には信頼感が欠けている」と、レザーは語る。

実際、南北首脳会談に対する市場の反応はごく控えめだったと、レザーは指摘する。それに「一般に、朝鮮半島情勢は市場心理を動かす大きな要因にはならない」と、言う。「昨年トランプが、『炎と怒り』という言葉で北朝鮮を脅したときでさえ、金融市場の反応は長続きしなかった」

平和条約の次の段階となる南北統一は、莫大な恩恵とコストの両方をもたらすだろう。「北朝鮮の人口約2500万人は比較的若く、(少子高齢化が進む)韓国の人口動態を改善する。国防費も減るだろう」と、レザーは語る。「だが、統一のコストは莫大だ。韓国と北朝鮮の経済格差は、東西ドイツの比ではない。韓国政府はかつて、統一のコストをGDP100%相当と試算したことがある」

だが北朝鮮にとって、平和条約がもたらす経済的な恩恵は大きい。「北朝鮮の指導部は、中国とベトナムが政治的締め付けを緩めずに経済を自由化して、見事な変革を遂げてきたのを見てきた」と、米資産運用会社マシューズ・アジアのポートフォリオマネジャーであるマイケル・オーは語る。

「若き金正恩(キム・ジョンウン)(朝鮮労働党委員長)が今後30年間を見据えたとき、北朝鮮も中国やベトナムのようになれるはずだと思ったとしても、不思議はない」

From thediplomat.com

※「統一朝鮮 本当のリスク」特集(2018年5月15日発売)はこちらからお買い求めいただけます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中