最新記事

原油価格

1バレル=70ドル突破、イラン核合意の行方めぐり原油市場が緊張

2018年5月8日(火)13時00分
ヒマンシュ・ゴエンカ

核合意を離脱するならアメリカは後悔することになる、と警告するイランのロウハニ大統領(写真は昨年) Stephanie Keith-REUTERS

<2016年初頭の底打ち以降、回復を続けてきた原油価格。今後の動きのカギを握るのはトランプ米大統領とイランとシェールオイル>

5月6日の米東部夏時間午後11時10分、アメリカの指標原油であるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)が2014年11月以来はじめてバレル当たり70ドルを上回り、70.59ドルの高値をつけた。これに先立ち、国際的な原油指標の一つである北海ブレントが1月に一時70ドルを突破し、4月の第2週以降は一貫して70ドル台をつけている。

原油価格は2016年1月半ばに底を打って以降、持続的な回復を遂げている。だがベネズエラ情勢やイランとの核合意をめぐる新たな懸念が浮上しており、それも帳消しになりかねない。またWTI原油の価格が北海ブレントよりも低い理由の一つである米国のシェールオイルの生産増も波乱要因だ。

ベネズエラでは、経済危機が一因で政治情勢が悪化しており、石油化学産業に投資する余力がなくなっている。ベネズエラの原油生産量は、2000年代のピーク時の半分の、日量約150万バレルにまで落ち込んでいる。

5月12日が制裁解除延期の期限

ベネズエラの国営石油会社PDVSAは米石油大手コノコフィリップスに20億ドルの債務(ベネズエラ国内の2つの石油プロジェクトが国有化されたことに伴う補償)があり、これが原因で同社がカリブ海に保有する主要な資産の一部を失って、さらに生産量が減る可能性もある。

実際に5月7日にはコノコフィリップスが、PDVSAがカリブ海のキュラソー島(オランダ領)に保有する製油所やタンカーなどの資産の差し押さえに動いていることが明らかになった。

またイランに関しては、アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスとドイツがイランと結んだ核合意について、ドナルド・トランプ米大統領が破棄する可能性をちらつかせている。

核合意は2016年1月16日に実施段階に入り、前日までバレル当たり30ドルを割り込んでいた原油価格は、この日から回復を始めた。

だが米政府は、核合意に基づく対イラン制裁の再開の是非を6カ月ごとに議会に報告しなければならないことになっており、次の報告期限が5月12日に迫っている。トランプ大統領は7日、これに関する決定を8日に発表するとツイッターで明らかにした。

トランプが対イラン制裁の再開を決定すれば、イランからの原油輸出量は減少する可能性が高く、そうなればさらなる価格高騰を招く可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中