最新記事

シリア内戦

トランプが命じたシリア「精密攻撃」の危うさ

2018年4月19日(木)15時00分
トム・オコナー

13日に米英仏の攻撃を受けたダマスカスの研究施設 (c)DigitalGlobe/REUTERS

<化学兵器使用を理由にアサド政権への限定的な軍事行動に踏み切ったトランプだが、ロシアとの全面対決を招く恐れも>

ドナルド・トランプ米大統領は4月13日、シリアの化学兵器関連施設への精密攻撃を命じたと発表した。同国のアサド政権が化学兵器を使用したとされる問題への対抗措置だ。この作戦には同盟国のフランスとイギリスも参加した。

「私は少し前、シリアの独裁者バシャル・アサド(大統領)の化学兵器能力に関連する施設への精密攻撃を米軍に命じた」と、トランプは全米に生中継された演説で述べた。

「フランスとイギリスとの共同作戦は現在進行中だ」とした上で、トランプはこう付け加えた。「禁止された化学物質の使用をシリア政府が停止するまで、(アメリカは)この対応を継続する用意がある」

シリア政府軍が4月7日、反政府勢力の拠点だった首都ダマスカス近郊東グータ地区のドゥーマを化学兵器で攻撃した可能性があると報じられると、トランプは9日に「強力な」対抗措置を取ると明言。米軍当局者と共に「あらゆる選択肢」がテーブルの上にあると口をそろえて主張し、シリアだけでなく同盟国のロシアとイランも「大きな代償」を支払わされる可能性があると警告していた。

トランプは13日の演説でイランとロシアに直接語り掛けた。「何の罪もない男や女、子供たちの大量虐殺に関与しようとするのはどんな国か? 世界の国々は、どんな友人を持っているかで判断できる。ならず者国家や残忍な暴君、血に飢えた独裁者を支援する国が長期的に成功することはない」

ロシアは15年以来、反政府勢力やイスラム過激派と7年越しの内戦を続けるアサド政権を支援してきた。ロシア軍はシリア全土に展開しているが、最も重要なのは地中海沿岸にある2つの軍事施設――タルトゥースの海軍基地とラタキア近郊にあるヘメイミームの空軍基地だ。トランプ政権が具体的な行動を検討している間に、シリア政府軍は装備の一部を両基地に移動したとも言われている。

米ロ両国はそれぞれの支援勢力を通じてテロ組織ISIS(自称イスラム国)と戦ってきたが、シリアの政治的将来については意見が対立している。ここへきて、両者の対立が本格的な軍事衝突に発展する恐れが出てきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金現物、4500ドル初めて突破 銀・プラチナも最高

ワールド

イスラエル、軍ラジオを来年閉鎖 言論の自由脅かすと

ワールド

再送-ベネズエラが原油を洋上保管、米圧力で輸出支障

ワールド

豪NSW州で銃規制・ 反テロ法強化、乱射事件受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中