最新記事

韓国事情

資源ごみをめぐって混乱が深まる韓国

2018年4月12日(木)17時10分
佐々木和義

資源ごみをめぐって混乱が深まる韓国 ARIRANG NEWS-Youtube

<韓国では、リサイクル業者がごみ回収を中断し、資源ごみをめぐって混乱が長期化する懸念が広まっている>

韓国首都圏のマンションで、資源ごみを巡って混乱が起きている。資源ごみの回収を請け負うリサイクル業者が、ビニール製品と発泡スチロール製食品トレーなどのごみ回収を中断しているのだ。

中国が資源ごみの輸入を停止

韓国のリサイクル業者は国内で回収した資源ごみの多くを中国に輸出してきたが、2017年7月、中国が世界貿易機関(WTO)などに、プラスチック、ビニール、繊維、金属など24品目の資源ごみの輸入を禁止すると通知し、2018年1月から発効した。

ヨーロッパ等の国々は新たな輸出先の確保に動き、東南アジアなどの新市場を開拓した。出遅れた韓国は新たな輸出先を見出せない状況が続き、採算が悪化したリサイクル業者が4月1日からビニール製品と発泡スチロールを回収しないとマンション管理事務所などに通知したのだ。

ソウル市は、資源ごみを出さないよう入居者に伝えたマンション管理事務所などに対して、資源ごみを回収しないのは違法であると説明。洗ったビニールと白色の発泡スチロールを回収するよう指導しているが、ビニールと発泡スチロールに加えてペットボトルも回収を拒絶するリサイクル業者が現れるなど混乱が広がっている。

世界有数のごみ排出国

韓国で1年間に排出される資源ごみは、国民1人あたり使い捨てカップ510個、ビニール袋は420枚で、包装用プラスチックは62キロに及んでいる。

大手スーパーや百貨店の食品売場の買い物袋は有償だが、自治体の指定ごみ袋の要件を満たす買い物袋は割高で、安価な袋はごみ袋として利用することはできない。

コンビニや在来市場で無償提供される買い物袋も要件を満たさず、買い物袋のほとんどはごみとして廃棄される。ビニール袋を捨てるためにビニール袋を購入して使用する。

また、近年ブームのカフェで提供されるコーヒーは使い捨ての紙コップが主に使われ、ペットボトルに入ったミネラルウォーターを利用する人が増えているのも資源ゴミが増えている理由の一つだろう。出前はプラスチック容器に入れられ、使い捨ての箸やスプーンとともに届けられる。簡易包装は好まれず、贈答品など中身に比べて外装が豪華な過剰包装も珍しくない。

輸出が減ったいっぽうで輸入量は急増

2018年1〜2月の廃プラスチックの輸出量は1万625トンで、前年同期3万5421トンの3分の1にとどまっているが、輸入は前年同期3814トンの3倍を超える1万1930トンに増加した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:労災被害者の韓国大統領、産業現場での事故

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中