最新記事

朝鮮半島

一国二制度「連邦制統一国家」朝鮮?──半島問題は朝鮮民族が解決する

2018年4月3日(火)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

しかし、何度も書いてきたように、朝鮮民族による統一国家ができ上がれば、隣接する中国吉林省朝鮮族延辺自治州にいる中国籍朝鮮族の心は穏やかではないだろう。民族への郷愁、祖国への思いは、どの時代、どの場所においても変わらないものだ。彼らが祖国や民族へのノスタルジーから延辺自治州を離れれば、中国における少数民族の独立を刺激する危険性を孕んである。それは一党支配体制崩壊への引き金となりかねないのである。

阻害因子は、むしろ米中

したがって中国はこの点において、まだ曖昧模糊とさせながら、中朝友好の顔を金正恩に見せるにとどめている。

アメリカとなったら、さらに複雑で厳しいものがあるだろう。

どんなに金正恩が連邦制統一国家構想に向けて、非核化を「段階的に実現していく」と言っても、トランプ大統領が認めない可能性がある。基本、誰も信じないというのが一般的な反応だろう。

つまり、南北が和解して朝鮮民族だけによる統一国家を建国していこうとしても、米中の利害が最後に阻害容認になる可能性を孕んでいるわけだ。

北朝鮮としては、少なくとも中国の承認は得たいだろうが、中朝首脳会談ではそこまでは踏み込んでいない。

ただ、北朝鮮が中国に南北和解のご挨拶と、習近平が新型大国関係などと言って最大の敵国アメリカと緊密になろうとしていたそのアメリカの大統領と首脳会談しますよと「ご挨拶」に行ったのと、「私の背後には中国がいる」とアメリカに見せつけるという初期段階までの接触しかしていない。

これからの正念場は、まずは南北首脳会談だ。第1回および第2回南北首脳会談における共同声明というかコンセンサスが基本になるだろうが、そのいずれにも南北それぞれの「連邦制統一国家」構想が込められている。

長くなった。今回はここまでとする。

今回もまた騙されるのか? 考察は今後も継続していきたい。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税、英成長を圧迫 インフレも下押し=英中銀ディ

ビジネス

米9月中古住宅販売、1.5%増の406万戸 7カ月

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、10月はマイナス14.2

ワールド

米、イスラエルによるヨルダン川西岸併合容認せず、副
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 9
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中