最新記事

中国政治

習近平体制の閣僚人事を読み解く

2018年3月31日(土)13時30分
ミンシン・ペイ(クレアモント・マッケンナ大学ケック国際戦略研究所所長)

3月19日の全人代で新しい閣僚人事が承認されたが… Jason Lee-REUTERS

<国家主席の任期制限を撤廃し、行政機構を大刷新――しかし閣僚に選ばれた顔触れは意外に新鮮味がない>

国の最高実力者、習近平(シー・チンピン)は内閣の機構と人事を大きく刷新するのか――。3月20日まで2週間余りにわたって開催された中国の全国人民代表大会(全人代)で大きな関心を集めていたイベントの1つは、新内閣の発表だった。

注目されたのは当然だ。習は18年の全人代で国家主席の任期制限を撤廃させ、永久政権へのレールを敷いた。そうなればおのずと、習が内閣の機構を改革して有能な新しい人材を登用し、大胆な外交政策と国内政策を推進できる態勢を整えるのかに関心が移る。

では、実際の人事はどうだったのか。中国ウオッチャーたちが注目したのは、17日に習国家主席と一緒に、習の「盟友」とされる王岐山(ワン・チーシャン)が国家副主席に選出されたことだ。

これは異例の人事と言える。王は69歳。習体制発足以来、汚職摘発キャンペーンの指揮を執り、習の権力基盤強化に尽力していたが、昨秋の共産党大会で最高指導部の政治局常務委員を退いた人物だ。共産党の慣例に基づいて、「定年」により退任したものとみられていた。

国家主席の任期制限撤廃と併せて、共産党指導部を既に退いた高齢の王を国家副主席に起用したことは、習が一切のルールに縛られるつもりがないという意思表示と見なせる。王は国家副主席として外交政策などを取り仕切り、緊張を増している対米関係の舵取りにも手腕を振るうだろう。

実務派と「身内」で固めた

今回打ち出された内閣の機構改革は、89年の天安門事件以降では最大の規模だ。複数の省庁が統廃合されたほか、移民や国際協力を所管する官庁が新たに設けられた。

機構改革の狙いは、共産党の支配を強化し、それを強く印象付けることにある。例えば、中央政府の徴税部門が省レベルの徴税活動も担うようになり、地方の財政面での自律が大幅に縮小された。プロパガンダ部門の党中央宣伝部が報道、出版、映画の監督官庁を直接管轄するようにしたことも、共産党の支配を徹底する試みの一環と位置付けられる。

しかし、内閣の機構こそ大きく刷新されたが、人事はさほど目新しいものではない。おおむね見覚えのある顔触れが閣僚に名を連ねた。特に経済部門でその傾向が強い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中